角膜潰瘍<犬>

概要

Overview

外傷や感染が原因で角膜の組織が欠けてしまう病変が角膜潰瘍です。
角膜は透明で、表面から上皮、実質、デスメ膜、内皮という層から成る薄い組織です。角膜の損傷が上皮のみの浅いものを表在性角膜潰瘍、角膜実質に及ぶ深いものを深部性角膜潰瘍といいます。
また、ボクサーやフレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバーなどでは、上皮細胞が基底膜に接着できないことによる難治性潰瘍が見られることがあります。
なお、難治性潰瘍はボクサー潰瘍ともいわれます。

角膜潰瘍のフローチャート

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※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。

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原因

犬の場合、多くは外傷が原因で起こります。特にパグやシーズーといった短頭種は目の外傷を起こしやすいため、発症が多くみられます。角膜の外傷の他、乾性角結膜炎(KCS)、眼瞼の異常、感染症、角膜や結膜内の異物、眼瞼欠損などが原因でも起こります。
また老年性の角膜変性症は角膜潰瘍に進行しやすいことが知られています。

症状

角膜は知覚神経が多く集まっているため、潰瘍があると強い痛みを伴い、まぶたの痙攣、羞明(しゅうめい=目をシパシパさせる)、流涙などの症状がみられます。
見た目では病変が確認できなくても、このような症状があり、病院で検眼鏡等による検査やフルオレスセイン染色検査を行うことで、小さな傷を確認できる場合もあります。
また膿性の目ヤニや結膜の充血、角膜の浮腫や混濁、血管の侵入が見られることもあります。潰瘍が深部(デスメ膜)にまで届き、デスメ膜が瘤のように突出した状態(デスメ膜瘤)になることもあります。最悪の場合には欠損が角膜の全層にまで及び(角膜穿孔)、角膜に穴があいて眼房水が流出することもあります。

角膜潰瘍のフレンチ・ブルドッグ(右眼の処置前)
▲角膜潰瘍のフレンチ・ブルドッグ(右眼の処置前)
角膜潰瘍のフレンチ・ブルドッグ (右眼の処置後)
▲角膜潰瘍のフレンチ・ブルドッグ (右眼の処置後)

治療

角膜潰瘍に至った原因を確定し、治療します。一般的に抗生剤や消炎剤の点眼、ヒアルロン酸ナトリウムのような角膜保護剤の点眼などを使用しますが、状況によっては点眼薬だけでなく内服薬、注射などで全身投与をする場合もあります。
また、新たに角膜を損傷することを予防するためにエリザベスカラーを装着します。
潰瘍が深い場合には、「自己血清点眼」と呼ばれる、自分の血液で作る点眼薬を用いて治療を行ったり、コンタクトレンズの装着で患部を保護することもあります。
このような内科療法で改善が認められない場合や症状が重篤な場合には結膜フラップ、第三眼瞼(瞬膜)フラップ(※)などの処置や角膜縫合を行います。また難治性の角膜潰瘍では、外科手術によって治癒が困難な角膜上皮を切除し、格子状もしくは点状角膜切開などで新たな傷を作り、治癒を促す治療を行います。
※結膜フラップ、第三眼瞼フラップとは角膜の潰瘍部分を、一定期間、結膜や第三眼瞼(瞬膜)などで覆って縫合することにより、角膜の保護をしながら治癒を促す処置の方法です。

予防

目で見て病変が確認できなくても、羞明がみられたり、涙がいつもより多く出ている場合には、角膜潰瘍を起こしている可能性があります。進行すると角膜穿孔に至り失明する危険もありますので、早期発見、早期治療が大切です。
普段から、目の充血、涙の量、目ヤニ、左右の目の大きさなどチェックするようにして、何か異常が認められたらすぐに受診するようにしましょう。
特にシーズーやパグなどの目に外傷を受けやすい犬は、普段から目の健康に注意するようにしましょう。

病気のデータ

Disease data

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