私たち人間は言葉があるため情報の伝達が可能です。また、教育を受けることによって自然やその災害についての知識も持っています。世代を超えて智恵や知識などについて伝授することも可能です。このような私達であっても、大地が揺れ、水が襲う・・・穏やかな自然がいつもとまったく違う凶暴な顔を見せたときには大きな恐怖を感じ、立ちすくんでしまいます。
一方、私達の大切なパートナーであるワンちゃんやネコちゃん達は、自然災害をどのように感じているのでしょうか。理由も分からず、野性の本能のまま逃げるという手段も失い、どれほどの大きな恐怖に慄いているか、その気持ちを想像すると、言葉を失ってしまいます。
自然災害に見舞われた時、このようなどうぶつの安全や心を守るのは私たち人間です。そのためには、どのようなことに心がけたら良いのかを考えてみましょう。
日頃から心掛けておきたいこと
【人間は信頼でき、従う存在であることを教える】
平静に毎日が過ぎているとき、愛らしい表情を見ていると、ついつい「好きなようにさせてあげたい」と思ってしまいますが、災害に見舞われたときには、限られた環境や行動の中にどうぶつの身を置かなければならないという状況が生じます。そのような状況下の どうぶつの戸惑いを最小限に留めるためには、日頃から飼い主さんがどうぶつの行動をコントロールするよう心がけておくことが大切です。ワンちゃんであれば、「スワレ」「マテ」などの指示を利用すると良いでしょう。
また、どうぶつの名前を呼んだときに飼い主さんに注目するようにしておきたいですね。日ごろから名前を呼んだとき、どうぶつが飼い主さんのほうを振り向いたら、「お利口ね」と褒めてあげることが大切です。人が安心でき信頼に値する存在であることを、根気強く伝え続けておきましょう。
【狭いところにいられるようにする】
いざという時にキャリーバッグやクレートなどに入っていられるように日頃から慣らしておきましょう。ポイントは、「入っていると良いことがある」、「心地良い」と思わせることです。焦らず、少しずつ慣らしておきましょう。反対に叱ったときにケージなどに入れるという事をしてしまうと、ワンちゃんやネコちゃんにとっては、「ケージに入ること」が「叱られるという嫌なこと」と結びついてしまい、いざというときに強い抵抗に戸惑うことになります。
特にネコちゃんの場合はいったん嫌がったら手に負えないことも多いのですが、抵抗を少なくさせるために、まずバスタオルなどで体をそっと覆って安心させてみる事が有効なこともあります。
【身元の確認ができるよう、用意をする】
災害時の混乱でどうぶつが迷子になってしまう可能性も考えられます。
日常から、室内にいるときでも首輪や迷子札をつける(首輪がつけられないどうぶつの場合には脚輪など)、または事前にマイクロチップを装着するなどの対応を考えておきましょう。
緊急時に用意するものは?
例えば避難命令が出たときなど、いざというときにすぐに持ち出せるように避難用具を用意しておきましょう。「どんなものがあると良いか」の参考例を以下に挙げてみました。
【用意しておきたいもの】
1.フード
少なくとも3日分のご飯は用意しておきましょう。特に処方食の場合は余裕をもって用意しておきます。また、食べ物の選り好みが激しい子の場合、「お気に入りのフードがないため食事を摂ることができない」という事態に陥ることも考えられます。色々なお食事が食べられるようにしておくと、いざというときに助かりますね。
2.水
最低3日分の水は用意しておきましょう。普段から緊急用として購入しておくと安心です。水道水が確保できる場合なら、その日に飲む分を水筒やペットボトルに入れても良いでしょう。
3.キャリーバッグ
日ごろから部屋に置いておき、「キャリーバッグ=リラックスできる場所」にしておくと良いでしょう。
4.首輪やハーネス、リードなど
大きな音や揺れなどに驚き、逃げ出して迷子になってしまったら大変です。行動を制御し、どうぶつの安全を確保できるようにしておきましょう。ネコちゃんの安全確保のためには洗濯用ネットが役立つかもしれません。
5.薬、救急セット
持病のある子は、常備薬を持ちましょう。また、包帯などがあると役立つかもしれません。
6..飼育の記録・写真
ワクチン接種の記録やかかりつけの病院の電話番号など、あるいは病歴や体の特徴などを普段から手帳などにまとめておきましょう。ボールペンを手帳にさしておくと安心ですね。また、万が一迷子になったときの捜索用に写真を入れておくと良いかもしれません。
【余裕があれば用意しておきたいもの】
7.食べ物や水を与えるときの容器
水を入れたりフードをあげたりできる容器を用意しましょう。軽いものが便利です。
8.タオル類、ダンボール類
ベッドや防寒具にもなります。持ち運びが比較的楽な小さめの毛布、タオルケットなども良いですね。
9.ビニール袋・ゴミ袋など
10.ペットシーツやトイレ砂、新聞紙、ウエットティッシュなど
トイレに困らないように、お子様にあわせて用意しておくとさらに良いでしょう。
11.オモチャ類
好きなオモチャや飼い主さんの匂いのついたタオルなど、どうぶつが安心できるものをケージやクレートに入れてあげましょう。
この他にも、マナーバッグ、サニタリーパンツ、マナーベルトなどがあると共同生活をするときには役立ちます。
心のケア
災害に見舞われた後は、飼い主さんにとっても、たいへん大きな不安感やストレスがある時ですが、どうぶつにとっても同じですので、その後にいつもと異なる行動がみられることがあります。たとえば、「飼い主さんの傍を離れようとしない」、「(怯えて)震える」、「暗闇を恐がる」、「狭い場所から出てこない」、「食欲がないなど」が挙げられます。このようなとき、どうぶつの心を守るためにはどの様なことに気をつけたら良いでしょうか。
【時間が解決してくれることがある】
「このまま、この子はどうなるのだろう」と不安に思ってしまいますが、なるべく安心感を与え、穏やかに接することでだんだんと落ちついていくことがほとんどです。
厳しく叱ったり無関心を装ったりすることで、かえって状況が悪くなることもあります。焦らず、どっしりと受け止めてあげてください。
【一定のペースを守ることで安定感を】
普段どおりにいかないことも多くあると思いますが、状況に応じて、なるべく規則正しい生活をしていただき、生活のペースを一定にしましょう。
【優しく話しかけてあげる】
落ち着いた、ゆったりとした話し方で、「大丈夫だよ」と語りかけてあげましょう。
「撫ぜて」と近づいてきたときには優しく撫でてあげましょう。スリスリしてほしい、と近づいてきたらスリスリしてあげましょう。その子にあわせて、ゆっくりと安心できる時間をできる範囲で作ってあげましょう。