動物の愛護及び管理に関する法律 <犬>

 

きらめく命を有する動物は、人の社会に温もりや癒しを与えてくれます。
共に時間や空間を過ごす人と動物との距離は、心理的にも物理的にも、より親密になってきています。この数十年で動物を取り巻く社会情勢もどんどん変化を遂げており、このような社会の変化に伴い、法律も見直され、改正されています。

 

動物の愛護及び管理に関する法律の制定と改正の経緯について

 

昭和48年に制定された「動物の保護及び管理に関する法律」(動管法)が、平成11年に「動物の愛護及び管理に関する法律」(動愛法、以後、動愛法と呼びます)に名称をかえ、動物取扱業の届出制の導入、飼い主の責任の徹底など、大幅に改正されました。平成17年には動物取扱業者の届出制から登録制への変更、特定動物の許可制、実験動物への配慮などが改正されました。
平成17年に改正された動愛法の附則第9条では、「この法律の施行後5年を目途として、新法の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」とされ、平成24年にも動物取扱業の規制の強化などの改正がされました。

 

動愛法の目的は?

 

動愛法の第1条を見てみましょう。
(目的) 第1条 この法律は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱い、その他動物の健康及び安全の保持などの動物の愛護に関する事項を定めて国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資するとともに、動物の管理に関する事項を定めて動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害並びに生活環境の保全上の支障を防止し、もつて人と動物の共生する社会の実現を計ることを目的とする。

すべての動物の飼養に関して、「虐待や遺棄の防止」、「適正な飼養と愛護」、「動物による危害の防止」を柱に、動物を慈しむことで育まれた気風が、命を大切にする、平和な社会への推進力となるように定められた法律です。

 

動愛法の内容について

 

◇基本原則について
虐待などで動物を苦しめることがないようにするだけではなく、人と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知り、適正に扱うことが大切です。

対象となるそれぞれの動物についてのガイドラインが定められています。
・家庭動物・・・「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」
 家庭で飼われているペットから学校飼養動物まで含まれます。
・展示動物・・・「展示動物の飼養及び保管に関する基準」
 動物園やふれあい施設、ペットショップやブリーダー、動物プロダクションなど、様々な施設で飼養されている動物が対象となります。
・実験動物・・・「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」
 科学的な目的のため研究施設などで飼われている動物が対象になります。
・産業動物・・・「産業動物の飼養及び保管に関する基準」
牛や鶏などの産業利用のため飼われている動物が対象になります。
   
◇飼い主の責任
かけがえのない命を守る動物の飼養者として、しっかりと責任を果たしていくことが求められます。動物の種類や習性に応じた飼育を適正におこない、動物の健康と安全を守り、動物の命が終わりを遂げるまで責任を担うのが飼い主です。飼っている動物が他に危害を与えたり、糞尿や毛などで周囲に迷惑を及ぼしたりしないようにすることも求められます。
また、飼い主の責任として、むやみに繁殖をさせないよう不妊去勢手術を適正に行うこと、動物同士や人と動物との間で感染する病気を適正に予防すること、自分の所有する動物であることを明らかにするため、マイクロチップなどの標識を付けることなどが求められます。

◇家庭動物等の飼養及び保管に関する基準
「動物の愛護及び管理に関する法律」に、環境省告示として「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」が定められています。
ここでは、「ワンちゃんの飼養及び保管に関する基準」として次のように6点が求められています。

1.特別な場合を除き、ワンちゃんを放し飼いにしない
2.けい留する際は、ワンちゃんの行動範囲が道路に接しないようにする
3.糞尿の放置や騒音などにより周辺住民の日常生活に支障が及ばないようにする
4.人に迷惑をかけないように適切なしつけを行う
5.屋外で運動させる場合は、リードを装着し、場所や時間帯などにも心配りをする
6.屋外で運動させるときなどは、必要に応じて口輪の装着等を行い事故を未然に防ぐよう努めること
7.やむを得ず飼養できなくなった場合は、次の飼い主を探すなどの手段を講じ、譲渡先を見つけられない場合には、都道府県等に引き取りを求める。
8.特別な場合を除き、子犬ちゃんを離乳前に譲渡しないようにする

◇周囲の生活環境への心配り
管理できる範囲を超えて飼養し、悪臭や騒音などで周辺の生活環境が損なわれている場合、都道府県知事や政令市の長が飼い主に対して改善勧告・命令を行います。

◇動物取扱業者の規制
動物取扱業は、営利性がある第一種動物取扱業と営利性を目的とせず一定数以上の動物を取り扱う第二種取扱業に分類され、第一種取扱業を営むときには、適正に動物を扱うための基準を満たした上で都道府県又は政令市の長の登録を受ける必要があります。また、登録にあたり、犬猫健康安全計画の策定と遵守が義務付けられています。平成24年の改正では、販売や保管、展示や貸出、訓練を目的とする業者などのような動愛法に基づく登録等の義務や規制を受ける業種の中に、高齢のワンちゃんやネコちゃんの世話をする老犬や老猫ホームのような譲渡飼養業者や動物オークション市場の運営業者も加えられました。
都道府県知事等の動物愛護担当職員は立ち入り検査を行い、動物取扱業者に問題点が見出される場合は、都道府県知事や政令市の長は改善勧告や改善命令を行います。また悪質な業者に対しては、登録の取り消し、業務停止命令を行います。登録をしないで営業した場合や改善命令や業務停止命令に従わない場合は、100万円以下の罰金、登録内容の変更を届け出なかったり虚偽の報告をしたりした場合は、30万円以下の罰金が科せられます。

◇動物取扱業者の適正化
平成24年の動愛法の改正では、動物取扱業者の責務として動物の終生飼養を確保するよう明記されるなど、動物取扱業者の適正化という意味でも大きな意味を持っています。第一種動物取扱業者のうち、ワンちゃん、ネコちゃん等の販売業者は、販売に際して実際の動物を確認し、対面での説明を経た販売が義務化され、出生後56日を経過しない子犬ちゃんや子猫ちゃん(平成25年9月1日から3年間は生後45日などの経過措置がある)を販売のために引渡したり展示したりすることが禁止されました。 また、販売業者や展示業者、貸出業者がワンちゃんやネコちゃんの展示をする場合は、午前8時から午後8時までの間に行うことが定められました。
なお、猫カフェについては、平成26年5月までは、例外的に午後10時の営業を認められる緩和措置がとられていましたが、さらに2年間この緩和措置を延長することが環境省により定められました。

◇危険な動物の飼養規制
国(政令)は人に危害を与える恐れのある危険な動物などを「特定動物」として飼育を規制をしています。これらの「特定動物」を飼うときは都道府県等の許可を受けなければなりません。守るべき基準が守られていない場合、許可は取り消されます。また無許可で「特定動物」を飼養したり、許可を得ないで飼養施設を移動、あるいは構造を変更した場合には、6か月以下の懲役あるいは50万円以下の罰金に処せられます。

※1 守るべき基準は次のように定められています。
・飼養施設の構造や規模に関して
 一定の基準を満たした、おり型施設などでの飼育保管が必要です。
 また、逸走を防止できる構造や強度が必要です。
・飼養施設の管理方法について
定期的に施設を点検するなど、しっかりとした管理が求められます。
 また、特定動物を飼育しているということが分かるよう標識を掲示します。
・管理方法に関して
 施設の外で飼養しないこと、またマイクロチップを挿入することで個体識別ができるようにすることが必要です(鳥類は脚環でも可)。

※2 特定動物って? 
トラ、タカ、ワニ、マムシなど哺乳類、鳥類、爬虫類の約650種が対象となります。

◇.虐待や遺棄の禁止
愛護動物を虐待したり捨てたりすることは犯罪です。
違反した場合の処分は以下のように定められています。
・愛護動物をみだりに殺したり傷つけたりした者には、2年以下の懲役あるいは200万円以下の罰金
・愛護動物の適切な世話を怠り衰弱させるなどの虐待を行った者や愛護動物を遺棄した 者には、100万円以下の罰金

※1愛護動物とは、飼い主の有無に関わらないすべての「牛、馬、豚、めん羊、やぎ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる」、人に飼われている「哺乳類、鳥類、爬虫類」を指します。

※2動物虐待とは、動物を不必要に苦しめる行為をすべて含みます。この中には正当な理由なく動物を殺したり傷つけたりする積極的な行為だけでなく必要な世話を怠ったり、ケガや病気の治療をせずに放置したり十分な水や餌を与えないなどのいわゆる「ネグレクト」と呼ばれる行為も含まれます。

◇ワンちゃん、ネコちゃんの引取り
都道府県はワンちゃんやネコちゃんの所有者からの引取りを行い、また飼い主が不明であったり、公共の場で病気や怪我をして発見されたワンちゃんやネコちゃんを収容します。
平成24年の改正では、動物取扱業者から依頼される引取りや、病気や高齢を理由とした引取りのように、終生飼養の原則に反する引取りは拒否できる旨が定めらました。

◇動物愛護週間と普及啓発
国や地方自治体は学校や地域、家庭などへの教育活動、広報活動を通じて動物の愛護と適正な飼養の普及啓発を行います。また、毎年9月20日から26日を動物愛護週間とします。

◇.国・地方自治体の取組み
都道府県は、国が決めた基本指針に沿った、かつ地域の状況に即した計画を推進します。また、都道府県知事や政令市の長は動物愛護推進員を委嘱し、その活動を支援するための協議会を組織することができます。

 

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