うさぎの健康管理

 

クリクリとした瞳が愛らしいうさぎが傍にいてくれると、心が温かくなりますね。 たくさんの元気をくれる我が家のうさぎたちが健康で暮らすためには、どのような点に留意をすれば良いのでしょうか。今月は「うさぎの健康管理」についてご案内いたします。

 

飼育環境について

 

【温度や湿度について】
私たちが家庭で飼育しているうさぎのルーツは、アナウサギ属のヨーロッパアナウサギです。本来、アナウサギは地面に穴を掘って住む穴居性の動物であるため、私たちと暮らすうさぎも、寒さと暑さのどちらにも適応力は高くありません。また、急激な温度の変化や湿気、すきま風にも弱いどうぶつです。なお、気温については18度から23度くらい、湿度については45%〜60%くらいが理想的だとされています。

【ケージについて】
市販のケージには金属製の網タイプのものが多くみられます。うさぎはケージをかじることが多く、金属製の網を長期間かじり続けると歯の異常を引き起こすことがあります。かじって遊べる木製のオモチャをケージ内に入れてあげるなどして、なるべくケージをかじらせないようにしましょう。また、かじったときに、うさぎをケージから出すと「かじればケージから出してもらえる」ということになってしまいます。うさぎがケージをかじっても知らん顔をしているほうが良いでしょう。
うさぎが足裏を痛めることを防ぐためには、ケージの床は金網タイプの物ではなく、木製のスノコなどをご利用いただき、敷物には、干し草やワラなどをご利用いただくのが望ましいでしょう。

◇感染病予防のためには、ケージを清潔に保つことがたいへん重要です。敷物などが汚れていると足裏の皮膚炎の原因となりますので、適宜取り替えてあげてくださいね。
また、定期的にトイレや食器などをきれいに洗い、日光を利用して乾燥させるようにしましょう。

◇ケージは、うさぎがのびのびと過ごせる広さがあると良いですね。また、ケージ内に隠れ家になるような小屋を置いたり、ケージの一部分に布などで覆いをしたりして、 うさぎが、よりくつろげるスペースを作ってみても良いでしょう。ただし、ケージを覆う布をうさぎがケージの中に引き込んでしまわないように気をつけましょう。

【うさぎの多頭飼育について】
◇うさぎは縄張り意識が強いどうぶつなので、多頭飼育する際の環境については注意が必要です。特に去勢手術をしていない男の子を同じケージで飼うことは、激しいケンカをすることが多いので、ほぼ不可能でしょう。女の子同士の場合も難しいことが多いのですが、血縁関係があったり相性が良かったりする場合には仲良く暮らせることもあります。
男の子と女の子の組み合わせは仲良く一緒に暮らせることが多いのですが、避妊・去勢手術を受けていない限り次々と子供が生まれます。また、片方だけ手術をしている場合では、手術をしていないうさぎがストレスをためることになってしまいます。
どちらのうさぎにも避妊・去勢手術をご検討いただくことが望ましいでしょう。

【生活スペースについて】
◇うさぎは電気のコードやプラスチック、雑誌や新聞紙など、いろいろなものをかじりますので、うさぎが活動するスペースには、かじって危ない物は置かないようにしましょう。電気のコードなどは、うさぎの手の届かない所を、はわせるようにしたり、かじることができないカバーなどで覆うなどの工夫をしておきましょう。「目が届かないときは、うさぎをケージの中に」という習慣をつけると安心ですね。

◇フローリングや畳の上で活動をすることが多いと、うさぎの足裏がすれる状態が続いてしまい、足裏の毛が薄くなり皮膚炎を起こしやすくなります。生活スペースには適切な素材のじゅうたんなどを敷くことが望ましいのですが、じゅうたんの毛足がループ状であったり長過ぎたりすると、うさぎが爪をひっかけてしまい怪我をしてしまいます。じゅうたんはうさぎが爪をひっかけ難いものを選ぶようにしましょう。
さらに、爪のチェックを定期的にしていただき、伸びているようなら、爪の先端の、血管が通っていない白い部分だけを切るようにします。爪切りに慣れていないうさぎは暴れて怪我をしてしまう可能性がありますので、動物病院さんにお願いしても良いでしょう。

【食事について】
◇うさぎは野生では厳しい自然環境の中で生活をしており、完全な草食性です。うさぎが健康で過ごすためには、野生の生活に準じて、高カロリーで嗜好性が高い食事を与え過ぎないようにすることが大切です。
うさぎの胃腸と歯の健康を守るため、主食には干し草を与えるようにしましょう。 干し草の種類はチモシーが望ましいといわれています。
また、ラビットフード(ペレット)はなるべく低カロリー、高繊維、低カルシウムのものを選び、栄養のバランスをとるための補助的な食品に止めておきます。硬過ぎるラビットフードはうさぎの臼歯に負担をかけるので注意をしましょう。

【抱っこの仕方について】
◇うさぎの骨はたいへん軽く薄いので骨折に注意が必要です。抱っこの体勢が不安定だとすり抜けてしまい、骨折をしてしまうこともあります。うさぎが安心できるような抱っこをするようにしましょう。
まず、片方の手でうさぎの胸のあたりをすくうように優しく持ち上げます。もう一方の手でお尻をしっかりと支えるようにしながら持ち上げます。
最初は飼い主さんが座った状態で膝の上に乗せて、背中を優しくなでてあげ、短い時間から少しずつ、抱っこをする時間を長くしていきます。うさぎの胸やお尻が飼い主さんの体に密着している方が安定します。うさぎが嫌がる素振りを見せる前に、膝から優しく下ろすようにしましょう。

◇抱っこをしているときに、飼い主さんの肘の辺りにうさぎが頭を潜りこませるようにしたり、バスタオルや毛布などで体を覆ってあげたりすると、うさぎは安心することが多いようです。抱っこを嫌がるうさぎは多いのですが、最初は無理をせず、「抱っこをされることが心地良い。安心だ。」と思わせてあげてくださいね。

【屋外で遊ばせるときの注意】
◇うさぎは、穴を掘る習性があります。お庭や屋外のサークルで遊ばせている間に 土に穴を掘って逃げてしまうこともあるので気をつけましょう。

◇猫など、他のどうぶつに襲われないように十分な注意が必要です。屋外ではうさぎから決して目を離さないようにしましょう。また、屋外で遭遇するさまざまなことがうさぎにとってストレスとなることもあります。屋外を嫌がるうさぎは無理をさせず、室内のみで遊ばせるようにしましょう。

【危険な植物について】
◇オオバコやタンポポ、クローバー、レンゲ、ハコベ、ナズナなどは、うさぎが口にしても大丈夫ですが、農薬の散布などがされていないかの確認は必要です。一方で、うさぎが口にしてしまうと有害な植物がたくさんあります。
お部屋の植物やお庭の植物の中に、危険な植物がないかチェックをしておきましょう。

<うさぎにとって危険な植物の例>
次に挙げる植物以外にも有毒な植物はたくさんあります。また、うさぎにとっての毒性の有無について、分かっていない植物も多くあります。安全だと分かっている植物以外は食べさせない方が無難でしょう。

・ユリ科の植物(ヒヤシンス、タチアオイ、ユリ、チューリップなど)
・ヒガンバナ科の植物(アマリリス、スイセン、ヒガンバナなど)
・ヒルガオ科(アサガオなど)
・スズラン科(スズラン、オモトなど)
・キンポウゲ科(クリスマスローズ、フクジュソウ、オダマキなど)
・スミレ科(パンジーなど)
・オシロイバナ科(オシロイバナなど)
・キキョウ科(ロベリア、キキョウなど)
・キク科(フジバカマなど)
・ナス科(ホオズキ、チョウセンアサガオなど)
※ジャガイモ、トマト、ナスなどは、芽、葉、未熟の実が危険
・アヤメ科(アヤメ、クロッカスなど)
・ツツジ科(アザレア、アセビ、サツキ、シャックナゲ、ツツジなど)
・キンポウゲ科(クレマチス、フクジュソウ、アネモネなど)
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(なお、うさぎの食事と栄養についてはこちらのご案内をご覧ください。「うさぎの食事と栄養」)

 

 

健康管理のためのチェックポイント

 

◇野生では捕食される側のどうぶつであるうさぎは、病気になっても症状を隠す傾向があります。日頃の状態をよく観察することで、小さな変化も見落とさないようにしましょう。

◇うさぎはストレスに対して敏感であり、わずかな環境の変化のためにご飯を食べ なくなることもあります。未然に防げる環境の変化はなるべく避けるようにしていただき、なるべくストレスがかからないようにしましょう。
体調を崩したとき、急いで探さなくても良いように、普段からうさぎを診察している動物病院をご自宅の近くで探しておくと安心ですね。

<チェックポイント>

1.食欲の変化
不正咬合や毛球症などのような、うさぎによくみられる病気では、最初の症状として、「食欲が落ちる」ということがよく見られます。

2.便の状態
うさぎの便の大きさや量を毎日チェックしておくことは、たいへん重要です。健康なうさぎは、コロコロとした硬く乾いた状態の便を毎日たくさんします。何らかの原因で食欲不振がみられるうさぎでは便の量が減り、小さな便をするようになります。
また、うさぎは盲腸便という軟らかい粘液に包まれた黒色便もします。盲腸便はビタミン類を豊富に含み、うさぎにとっては重要な栄養源です。うさぎは通常、夜間に盲腸便を排泄して、肛門に直接口をつけてすぐに食べてしまうので、飼い主さんは盲腸便を目にすることはあまりないかもしれません。盲腸便を食べ残すことが多いのであれば、ラビットフードを過剰に食べ過ぎている、歯の病気のために盲腸便を食べることができない、などの理由が考えられます。
これらの便以外に、水溶便がみられたり、血便をしたりしている場合には腸の疾患や寄生虫疾患が考えられます。下痢便が確認出来なくても、お尻に便が付着して汚れている場合には、異常便が出ていることもあります。

3.尿
カルシウム代謝の特性から、うさぎは健康であっても尿中にカルシウムを排泄するので、うさぎの尿は濁っています。尿の色調は、食べたものの影響を受けて褐色、桃色、赤色とさまざまです。異常な尿との区別が付きにくい場合は尿検査が必要です。
また、うさぎは、カルシウムを多く含む食物の継続的な摂取により、膀胱結石が出来やすいので、「血尿」、「頻尿」、「トイレに座っているが尿が出ていない」などについても普段から注意するようにしましょう。また子宮の病気にかかっている場合にも「血尿」もしくは「陰部から出血性分泌物」が出ることがあります。特に3才以上の女の子は注意しましょう。

4.体重の変化
体重を定期的に測定しておくと、健康状態の指標となります。
その際、身体全体を優しく触って、身体の一部にシコリがないか、お腹が張っていないかなど、いつもと違うことがないかも確認してみましょう。
うさぎの皮膚は薄く軟らかいので、普段触り慣れていると、「お腹がはっている」、「しこりがある」などの変化に早めに気づくことができます。

5.毛並みや皮膚の変化
毛並みの変化、フケ、脱毛の有無などをチェックしましょう。ノミ・ダニ感染、細菌・真菌性の皮膚炎等も悪化すると治り難くなります。早めに見つけて治療をしましょう。
換毛期には、抜け毛が多く、グルーミングで毛をたくさん口にしてしまっても、嘔吐することができないうさぎは、吐いて体外に排出することができません。普段から丁寧にブラッシングをする習慣をつけて、不要な毛は取り除くようにしましょう。
また、足裏は特にトラブル(飛節びらんにリンク)を起こしやすい場所です。足裏に脱毛がみられたり、硬くなったり潰瘍(かいよう)※を起こしたりしていないかもチェックをしましょう。
※潰瘍とは、傷害や疾患によって皮膚や臓器の表面に欠損が生じた病変のことをいいます。

6.眼の周囲に異常がないか
うさぎの眼のトラブルは、眼科疾患だけではなく、歯科疾患や鼻涙管の詰まりに原因がある場合もあります。「眼球が普段より飛び出ているように見えていないか(突出)」、「涙が異常に出ていないか」、「眼ヤニが多くないか」、「充血がないか」、「眼の色に異常はないか」などに日頃から注意をしましょう。涙の量が多いようでしたら、皮膚病を予防のためにも、軟らかいガーゼなどを濡らして拭き取るようにすると良いでしょう。

7.くしゃみや鼻水が出ていないか
うさぎは、腹腔(ふくくう)※1と比べると胸腔(きょうくう)※2は狭く、呼吸器疾患にかかると急激に症状が悪化することも珍しくありません。くしゃみや鼻水が出ている場合は、鼻水が透明か膿性(のうせい)のものか、また呼吸状態はいつもと比べてどうか、耳を近づけてみて異常な呼吸音が聞こえないかなどを確認してみましょう。
※1腹腔とは、横隔膜から骨盤に至るまでの、腹膜でおおわれた空間をいいます。※2胸腔とは、肺や心臓が存在し、横隔膜で囲まれた空間をいいます。

8.お口の周りの異常
うさぎの歯は常に伸び続けますが、「干し草などを適切に与えることで、歯がすり減り、適切な長さに調節される」のが望ましい状態です。ところが、「ラビットフード中心である」などの食事の問題によっても、歯が異常な方向に伸びてしまったり、歯の根っこにあたる歯根が伸びてしまったりすることがあります。また、先天的に噛み合わせが合っていない場合や、事故により歯が破損した場合にも、異常に伸び過ぎた歯(歯冠)が口腔粘膜を傷つけたり、口内炎や潰瘍ができ、よだれが出たり、食欲不振となったりします。
歯根が伸びた場合には、涙があふれ出る(流涙)、眼ヤニ、顔面の膿瘍(のうよう)※など深刻な症状を呈します。発見のポイントとしては、「よだれが出ている」、「食べていないときにも口をクチャクチャと噛むような仕草をする」、「前肢の被毛がガサガサになっていて、よだれが付着している」などがあります。
※化膿性炎症により局所の組織から出た膿状の滲出物が蓄積した状態を膿瘍といいます。

9.耳を気にする
耳ダニ、細菌、真菌などにより外耳炎を起こすことがあります。耳垢がたまっていたり、頭をよく振ったり、後ろ足で耳をかこうとしている仕草がみられる場合は要注意です。 また、耳掃除に綿棒を利用すると、傷つけて外耳炎を起こすことがあります。お手入れの方法や頻度についても、事前にかかりつけの先生にご相談いただいておくと安心です。

10.爪が伸びている
うさぎの爪は野原を走り回ったり、土を掘ったりして自然にけずれることにより、 適切な長さに調整されますが、家の中で生活するうさぎには、定期的に爪切りをしてあげる必要があります。伸びたままにしておくと、引っかけて、折れてしまい出血をしたり、感染を起こしたりすることもあります。

※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。

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みなさんからのコメント

Comment
アニコム獣医師
2021-11-17 11:32:32
>アオ様
解剖学的に胃が左寄りに位置しているため、ゴムボールのようなものは胃、あるいはその他の臓器、何らかのできもの等の可能性があります。
毛球症、異物誤飲、ストレス等の影響で消化管に鬱滞が起こり、ゴムボールのようにお腹が張ることもございますので、食欲不振、元気がない、便が出ない、少ない、小さい等の消化器症状が見られたり、お腹の張りが続いている場合は受診されることをおすすめします。
アオ
2021-11-14 16:26:07
生後1ヶ月半の子ウサギを飼っています。
購入時、何の病気もないと言われたのですが、お迎えから2週間ほど経った頃に左の横腹あたりにだけゴムボールの様な張りと弾力がある事に気付きました。右側は柔らかいです。病気でしょうか?
ふくまる
2021-09-05 11:23:50
避妊手術をしてからケージ外ではうんちをしなくなりました。すごく元気なのですが、避妊手術前と比べてうんちの量が少し減った気がして心配になります。
アニコム獣医師
2021-02-17 10:20:20
>ししまる様
うさぎさんのような草食動物は体調の悪さを隠す性質があるため、食欲不振などの症状が出た場合はすでに発症してからかなり時間が経過している可能性があります。
可能であれば食べなくなったその日に、難しければ一刻でも早く受診していただきたく思います。
ししまる
2021-02-14 00:49:07
生後3ヶ月ほどのウサギを飼っていますが、急にペレットをあまり食べなくなりました。牧草は食べますが以前よりは食べなくなりとても不安です。。
病院もなるべく早く行きたいですが仕事の関係で明後日行きます。
その間に何か私にできることはありますか?

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