どうぶつのターミナルケア( 8 ) 自宅で行うケア <適度な刺激を与える>  <犬>

 

 

ターミナル期のどうぶつは、どうしても体の自由がきかなくなったり、寝ている時間が多くなります。体が思うようにならない辛さや痛みも、「楽しい」、「気持ちがいい」と感じさせてあげることで軽減されることがあります。身体の負担にならない程度のちょうど良い刺激を与えてあげることは、心と体を良い状態に保つためにも大切なことです。

 

 

ウチの子が楽しそうな表情を見せるときって、どのようなときだろう

 

 

 

ウチの子が嬉しそうな表情を見せるのは、どのような時でしょう。

子犬や子猫の頃、いつもくわえて振り回していたぬいぐるみを目にしたときでしょうか。

大好きなパパがいつも使っているクッションに顔をうずめるときでしょうか。

「可愛い子ね」とママに撫でてもらったときの得意そうな顔は世界一ですね。

お散歩中に一休みする公園のベンチはウチの子との特別な場所・・・。

大好きな物・場所・匂いなどは、痛みなどで体が思うようにならないどうぶつの辛さを和らげてくれ、 豊かな気持ちにさせてくれるかもしれません。快適な刺激をずっと与え続けてあげることは重要です。毎日の生活の中で、どうぶつが嬉しそうな表情を見せてくれることをずっと続けてあげましょう。

 

 

 

安全に遊ばせてあげる工夫をする

 

 

 

足腰が弱ってきた犬や猫でも無理なく好きな遊びができるように、室内では滑り止めのマットを敷いたり、段差をなくしたり、ウレタンのマットなどを利用したりして安全な環境を用意しましょう。

ボール遊びや宝探しなどの遊びは、それぞれのペースに合わせて楽しむことができ、足腰が弱って きた犬でも、ジャンプしたり走り回ったりしなくても良い遊びです。

自分で歩くことのできない状態の犬であれば、片手にオヤツを入れて、両手を握って犬の鼻先に持っていき、どちらの手に入っているかを当てさせるというような、嗅覚を使った ゲームで遊んであげても良いでしょう。何よりも飼い主さんと一緒に遊ぶということが嬉しくて仕方がないと思います。興奮しすぎて無理をしないように注意しながら一緒に楽しんであげましょう。

 

 

マッサージを上手に取り入れる

 

 

 

「痛い所をさすることで痛みが和らいだ」という経験をしたことのある方は多いと思います。 これには「痛い所をさすることにより痛みの刺激が脳へ伝わりづらくすることができる」という科学的な根拠があります。また、さすることで筋肉の緊張がほぐれ、血行も良くなりますので、痛みの元となる 物質や老廃物を取り除きやすくするという効果も期待できます。マッサージというと特別なことで、 難しそうなイメージがありますが、「さする」ということだけでも立派なマッサージの一つです。

どうぶつが気持ち良さそうにする所を積極的にさすってあげましょう。大好きな飼い主さんにさすって もらって気持ち良さそうにウトウトとする可愛さは、きっと日々のお世話でたまった飼い主さんの心と体の疲れを和らげてくれるでしょう。ただし、病気の状況によっては触ることによる過度な刺激を与えない方が良い場合もあります。判断に迷う場合は、主治医の先生に相談してから行うようにしましょう。

 

運動量が減ったり、寝ていることが多くなったりすると、どうしても腸の動きが鈍くなり、ガスが たまったり便秘がちになったり、お腹のトラブルが起こり易くなります。お腹をさすってあげることで血行を良くしてお腹をあたため、腸の動きを良くすることが期待できます。嫌がらないようであれば、 おへそを中心にして「のの字」を書くようにマッサージしてみても良いでしょう。

また、寝ていることが多く、動いたり歩いたりしないでいると、身体の関節が硬くなって、動きづらく なってしまうことがあります。関節が硬くなると、それが痛みを引き起こし、寝返りを嫌がって褥創(じゅくそう=床ずれ)が出来易くなったり、夜鳴きの原因になることもあります。日頃から関節の曲げ伸ばし 運動などを行って、関節が軟らかく動くことのできる状態をできるだけ保ってあげられると良いでしょう。ただし、関節疾患などがあったり、曲げ伸ばしをしようとすると嫌がったりする場合などには、無理に 動かさない方が良いこともあります。主治医の先生に相談してから行うようにしてください。

大好きな飼い主さんにマッサージをしてもらうことは、どうぶつの精神的な安定のためにも良い効果が期待できます。犬でしたら、犬の好む香りの精油(エッセンシャルオイル)を使って、 アロママッサージをしてあげるのも良いでしょう。ただし、猫はアロマオイルと相性が悪く、中毒を起こす可能性が懸念されます。猫には精油(エッセンシャルオイル)やマッサージオイルを 使用しないようにしましょう。

 

 

アロマテラピーについて

 

 

 

植物の香りの力を利用して身体や心の健康をサポートすることを目的とするアロマテラピーは、適切な方法で行えば犬にも効果があるのではないかと考えられています。視覚や聴覚と比べて、 嗅覚は最後まで衰えにくいといわれていますので、老齢の犬でも、嗅覚に適度に刺激することはたいへん有効だといわれており、そのような犬のお楽しみの一つとして、アロマテラピーは最適かもしれません。

ただ、どうぶつに対するアロマテラピーの歴史は浅く開拓中の面もあり、犬に対する精油の 効果や安全性について、はっきりとした研究データや治験データがなく、賛否両論あるというのが現状のようです。人間の100万倍以上の嗅覚を持つともいわれる犬たちですので、利用の仕方 にはじゅうぶんに注意をしていただくことが必要でしょう。ご利用にあたっては、犬のアロマ テラピーについて詳しい動物病院の先生にお尋ねになったり、本などを参考にしていただくとよろしい でしょう。

なお、猫については、精油に対して中毒を起こす可能性があると言われていますので、アロマテラピーは避けていただいた方がよろしいでしょう。

どうぶつのアロマテラピーについては、どうぶつ親子手帳の次の記事でもご紹介しておりますので、参考になさってください。 「どうぶつとアロマテラピーとの相性について」

 

 

日光浴

 

 

 

適度な日光浴は生活リズムを整え、生活にメリハリをつけるために役立ちます。お散歩好きの犬であれば、太陽の出ている明るい時にお散歩に連れて行ってあげると良いでしょう。

お散歩が難しい犬や猫では、窓越しに日向ぼっこをさせてあげるのも良いでしょう。 ただし、長時間の日光浴はむしろ身体に害を及ぼすといわれていますし、日差しが強く、温度・湿度が高い時期の日光浴は、熱中症の危険もあります。季節や温度、湿度に応じて、ときどき様子を見ながら注意して行うようにしましょう。

 

 

お散歩

 

 

 

お散歩は体力・筋力の維持、気分転換にたいへん役立ちます。特にお散歩好きな犬であれば、体力に合わせた無理のないコースを選んで、ぜひ続けてあげましょう。ただし、病状や体調によっては無理にお外に出さない方が良い場合もあります。主治医の先生にご確認していただいた方が良いでしょう。足腰の弱ってきた犬であれば、介助用のハーネスなどを利用して歩行を補助してあげても良いでしょう。どうぶつの体調を良く把握いただきながら、犬のペースに合わせ、疲れない程度のお散歩コースを選んであげましょう。歩けない犬の場合は、外の空気や匂いに触れるだけでも気分転換になり良い刺激になりますので、抱っこやお散歩カートなどを利用して、お散歩を続けてあげると良いでしょう。

 

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【関連記事】

ターミナルケアの記事一覧はこちら

( 1 ) ターミナルケアとは

( 2 ) ターミナルケアで行われる医療行為

( 3 ) <食事のサポート>

( 4 ) <寝床の工夫と褥 瘡(じょくそう=床ずれ)の予防

( 5 ) <心地良い生活環境を作る>

( 6 ) <排泄の介助>

( 7 ) <身体の清潔を保つ>

( 8 ) <適度な刺激を与える>

( 9 ) <痛みでつらそうだったら>

(10) <褥創(じょくそう)ができてしまったら>

ターミナル期の過ごし方 〜今、ここを大切に〜

 

【関連リンク】

【ペットとお別れ】ペットの終活は必要?|アニコムユー

 

 

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