どうぶつのターミナルケア(10) 自宅で行うケア <褥創(じょくそう)ができてしまったら> <犬>

 

 

我が家にやってきてくれた、愛しいこの子と過ごす時間は輝いていて、出会えたことを神様に 感謝したくなりますね。

一方で、犬や猫たちにとって、時の流れは人の5倍ほどのスピードで過ぎていき、いつか「寿命は人より短い」ということがずっしりと胸に響く日がやってきます。

命の終着駅に向かって最後の力を振り絞って歩く我が子をしっかりと支え、悔いなく真心を尽くしたいですね。

 

褥創(じょくそう)のケアについて

 

 

 

ターミナル期を迎えた犬や猫は、体が動かなくなったり、麻痺があったりして同じ姿勢のままで過ごさなくてはならなくなることが多くなります。同じ姿勢で寝ていると、 体重がかかっている部分の皮膚が圧迫され続け、血流が障害されてしまい、局所的に皮膚が壊死してしまうことがあります。この状態が床ずれで、医療・介護用語では褥創(じょくそう)といいます。

褥創は、こまめに体位交換をしたり、皮膚を清拭(せいしき=体を拭くこと)することによりある程度の予防はできますが、どんなに手を尽くしていても、犬や猫の状態によっては出来てしまうことがあります。

 

 

早期に治療を始めることが重要!

 

 

 

褥創(じょくそう)ができてしまっても、適切なケアをすることで、ひどくならないようにすることは可能です。日頃から全身の皮膚の状態をよく確認し、褥創ができてしまったら早期に治療を始めるようにしましょう。特に、褥創内部から表面に液が滲み出てきたり(滲出液)、出血をしてジュクジュクしているような場合にそのままにしていると、感染を起こして化膿したり、状態や季節によってはウジがわいてしまったりする場合もあります。強い痛みや臭いの原因になってしまうこともありますので、そのような兆候がみられたらすぐに対処をすることが必要です。動物病院さんで傷の状況に応じた治療をしてもらいましょう。

なお、褥創ができやすい部分は、骨が出っ張っていて脂肪や筋肉が少ない部分とされ、具体的には肩や腰、かかと、膝、頬などです。これらの状況を注意深く観察する習慣をつけるようにしましょう。

なお、病院で行う褥創の治療は、一般的には次のような手順で行われます。

 1.褥創周囲の毛を丁寧に刈る。

 2.生理食塩水やぬるま湯などで優しく洗浄し、血液や滲出液を洗い流す。

 3.壊死組織などを除去する。

 4.状態に応じた軟膏や創傷被覆材(=傷口を保護するために覆う物)を使用して患部を保護し治癒を促す。

 

 

患部を清潔に保つ

 

 

 

動物病院さんで、できるだけ早めに適切な治療を受けるのがベストです。ただ、どうしてもすぐに受診することが難しい場合には、患部を清潔に保ち、圧迫されないようにする処置だけでも家でなさっておくと良いでしょう。

できれば、皮膚を傷つけないように十分注意をしながら褥創の周りの毛をハサミで短く刈りましょう。傷口周囲の滲出液などは丁寧に洗い流したり、やさしくふき取ったりしましょう。傷口を洗い流す際には、後片付けことを考えて、使用済みのパッケージ容器や化粧用のコットンや使い古しのタオル、ビニール袋などを利用なさるのも良いですね。

傷口の水分はよくふき取って、少しでも清潔に保つようにしましょう。

 

 

湿潤療法について

 

 

 

滲出液の中には、傷の治りを早める成分がたくさん含まれているので、それを利用して皮膚の 自然治癒力を高めることを目的とする「湿潤療法」と呼ばれる創傷治療の方法があります。

その一つとして、近年、人の褥創の簡便な処置法として、食品用ラップを使用した「ラップ療法」というものが提唱されており、どうぶつでも行われる場合があります。これは、きれいに洗浄した褥創の部分にワセリンを塗り、上から食品用のラップで覆うことにより、傷口から出てくる滲出液が失われないように湿潤環境を保つというものです。

湿潤療法は、適切な方法で行えば、褥創の管理にも有効で、どうぶつに痛みを与えることなく簡便に治療できる可能性があります。ただ、犬や猫は、人と違って被毛が生えていますから同じとはいかないこともあります。例えば、きちんとした剃毛(ていもう)の処理が必要だったり、感染がある場合には適切ではなかったり、二次感染を防ぐための処置が必要な場合もあります。不適切な方法で行うとかえって状態の悪化を招く可能性があるため、湿潤療法に詳しい獣医師の指導のもとで行っていただいた方が良いでしょう。

 

 

体位変換について

 

 

 

体位は、2~3時間に一度くらいの割合で体の向きを変えるのが望ましいでしょう。その際、急に変えようとして犬や猫をびっくりさせてしまわないように、必ず声をかけてから、慎重にゆっくりと動かすようにしましょう。また、背中を軸にお腹を上にして回すと内臓に負担がかかることがありますので注意しましょう。

大型犬の場合には、バスタオルやタオルケットなどを使い、犬の体重を利用して動かすようにすると良いですね。

また、褥創が出来やすい場所にはタオルやクッションなどを置いて、同じところだけ圧迫し続けないようにしましょう。

褥創の悪化を防ぐための寝床の環境については、

「どうぶつのターミナルケア(4)自宅で行うケア <寝床の工夫と褥 瘡の予防>」を参考になさってください。

 

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( 1 ) ターミナルケアとは

( 2 ) ターミナルケアで行われる医療行為

( 3 ) <食事のサポート>

( 4 ) <寝床の工夫と褥 瘡(じょくそう=床ずれ)の予防

( 5 ) <心地良い生活環境を作る>

( 6 ) <排泄の介助>

( 7 ) <身体の清潔を保つ>

( 8 ) <適度な刺激を与える>

( 9 ) <痛みでつらそうだったら>

(10) <褥創(じょくそう)ができてしまったら>

ターミナル期の過ごし方 〜今、ここを大切に〜

 

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