人間の赤ちゃんと猫との暮らしについて<衛生面について>

 

 

母親になり、お子さんを育て社会に送り出すということは、たいへんですが、喜びに溢れ、この上なく大切で素晴らしい経験ですね。

と暮らすご家庭で、飼い主さんのお腹に新しい命が宿り赤ちゃんが誕生することになったとき、飼い主さんは嬉しくて幸せな気持ちに包まれながらも、猫を飼育しながらの生活に不安を覚えることも多いと思います。

人生の中でもたいへん重要で素敵な、この二つの経験を並行して成功させるポイントについて考えてみましょう。

 

トキソプラズマについて

と一緒に暮らすご家庭で飼い主さんが妊娠なさった時、心配な病気として挙げられるのが、人獣共通感染症であるトキソプラズマ症です。

トキソプラズマは、豚や羊などの家畜を含むほとんどのほ乳類や鳥類の筋肉内に生息する寄生虫で、原虫の一種です。トキソプラズマは加熱の不十分な食肉やの糞便を通して人へと感染します。人から人への感染はありませんし、健康な成人が感染しても症状が出なかったり、軽い風邪のような症状が出たりする程度であることが多いのですが、胎児や幼児、免疫力が低下した基礎疾患を持つ高齢者などでは重症化してしまうこともあります。

特に注意を要するのが、終宿主であるが排泄した糞便中のオーシストと呼ばれる寄生虫の卵のようなものを、妊婦さんが経口的に摂取することによる感染です。

小腸粘膜からの侵入により、妊婦さんの血液中に寄生虫が存在する状態になります(寄生虫血症)。トキソプラズマは血液を介して胎盤に感染・増殖をし、胎児の脳などに影響を及ぼすようになります。妊婦さんの感染では、母体は無症状であることがほとんどですが、赤ちゃん側に流産や死産、先天性の障害が起きてしまうことがあるのです。

 

<妊婦さんがを通してトキソプラズマに感染するときの条件>

の糞便にオーシストが排泄されるのは、が初めてトキソプラズマに感染した時で、かつ感染後2、3日?3週間程 の限られた期間だけといわれています。また、排泄されたオーシストが感染力を持つには2日ほど時間がかかります。そのため、の排便後すぐにトイレを掃除することで感染力のあるオーシストを排除することができます。

 

<感染を防ぐために>

トキソプラズマに一度感染していれば体の中に抗体ができていますので、妊婦さんが発症するのは、初めてトキソプラズマに感染した時だけです。過去に感染したことがあれば、妊娠中に母体から胎児に感染する危険性は低くなります。

がオーシストを出すのも、妊婦さんが発症するのも、どちらも初回の感染の時だけですから、妊婦さんと双方の感染歴を確認しておくことが重要です。検査は、妊婦さんは産婦人科医院で、は動物病院で受けることが出来ます。妊婦さんもも共に検査結果が陰性であれば、を室内飼いにして生肉を食べさせず、のトイレ掃除はなるべく他のご家族にお願いしましょう。掃除をなさる方は使い捨てのビニール手袋を利用して、掃除後は手洗いをしっかりする ことで感染のリスクを下げるようにしましょう。

 

この他、との暮らしとは直接関わりのないことですが、トキソプラズマへの感染を予防するためには、次のようなことも重要です。

  1. 果物や野菜は良く洗ってから食べる
  2. 肉や野菜を調理した後は手を良く洗う
  3. 肉を料理するときは火を良く通す
  4. ガーデニングや家庭菜園などで土をいじるときは手袋を利用する

赤ちゃんにとっての「との暮らし」

ご両親やご親戚、近所の方・・・周囲の皆様は飼い主さんのご出産をどんなにか喜んでいらっしゃることでしょうか。その分だけご心配も大きく、「がいて大丈夫なの?」というような言葉をかけられることも多いと思います。

どんなことでも、たいへんなことには大きな喜びを伴いますが、との暮らしも同じ、たいへんさがあるのと同時に喜びも山ほど・・・・。

との暮らしが赤ちゃんにもたらしてくれるであろう、素敵な影響を挙げてみましょう。

 

1.情緒を安定させる

アニマルセラピーでも実証されているように、どうぶつとの触れあいは情緒を安定させる効果が期待できます。

2.命の大切さを教えてくれる

親御さんが愛情をもってのお世話をしている姿を間近で見ることや、自分よりも早く年を取っていくと接することにより、お子さんは小さな命を育くむことの素晴らしさや命の大切さを学んでくれるでしょう。

3.命に対する責任感を芽生えさせる

飼い主さんがお世話をしなければ人と暮らすどうぶつは生きていくことができません。

どんな時にでも、毎日お世話をしなければならないことから、命に対する責任感が芽生え、と強い絆を育んで  

いくでしょう。また「自分より弱いものを守ってあげたい」という優しい気持ちを育てる効果も期待できます。

 

 

衛生上のご心配について

 

 

 

これから産まれる赤ちゃんにとって、「がいる環境が衛生上問題ないか」ということへのご心配は大きいと思います。どんなに注意をしても、衛生面でどうぶつがいない状況と全く同じ状況にすることは難しいかもしれませんが、ポイントを押さえ。注意しながら生活をすることで、トラブルなく過ごすことが可能になるのではないでしょうか。

次に幾つかポイントを挙げてみましたので、よろしければ参考になさってください。

ただ、赤ちゃんの体質やご病気によっては、どうぶつとの生活は難しいと判断されるような場合もあります。人間のお医者さんや獣医師さんに相談をしていただき、ご心配な点やご不安な点は そのままにしないことも大切でしょう。

また、アレルギーの発症への関与についてのご心配もあると思います。

どうぶつがアレルギーの原因になることもあり、アレルギーを発症した場合には、小児科の先生の指導の元、十分な対策が必要です。一方で、最近の研究では、お子さんが小さい時からどうぶつと同居をしていると、アレルギーになり難い体質になるという報告もあります。

 

1.環境中を飛び散るの抜け毛を少なくするために、をブラッシングする習慣をつけたり、定期的にシャンプーをすることが望ましいでしょう。

2. 赤ちゃんが過ごす場所が床に近いと、「の毛が飛び散らないかしら」と気になりますね。ベビーベッドやクーハンなどをご利用いただき、ある程度床との距離を作ったほうが良いかもしれません。

3.空気洗浄機を利用する際、実際の部屋の広さより一回り効力の強いものをお選びいただくと良いでしょう。フィルターの清掃は取り扱い説明書を参考に、定期的に行いましょう。

4.赤ちゃんがハイハイをするようになった時に近づかせたくない「のトイレがある場所」などには、赤ちゃん用のベビーガードなどをご利用になって近づけないようにすると良いでしょう。

5.の排泄後、毛や身体に汚れが付着していれば、きれいに拭いてあげて、速やかに排泄物を処分しましょう。また、手洗いをしっかりすることなど基本的なことを励行いただき、赤ちゃんのお世話の前にもきちんと手洗いをする習慣をつけましょう。

6.ゴミ箱は、フタが付いているタイプの物にすると倒れても中の物がこぼれないで済みますね。手を使わないでも足で開けられるようなタイプの物も便利でしょう。

7.除菌タイプのウェットティッシュやアルコールタイプの洗浄液などをお家の中の幾つかの 場所に用意しておいて、気になったらさっと拭く習慣をお作りいただくと良いでしょう。

8.カーテンの汚れも、掃除機を利用するなどして、時々取り除くようにしましょう。

9.が飼い主さんの口や手などをなめたがることが多く、なめることが習慣化していることもあるでしょう。の唾液には、人への感染の可能性がある細菌もあり、抵抗力のある大人であっても、口を舐めさせることは衛生の観点よりお勧めできません。がなめようとしたら、飼い主さんはさっと立ち上がったり、体の位置を変えるようにしてはいかがでしょうか。

 

出産後は、ただでさえ心身共に、お母さんに負担がかかります。 

「ご家族の力を併せて!」という雰囲気をお作りいただき、お母さんの笑顔という最高のプレゼントをご家族に贈っていただきたいと思います。

 

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※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください

 

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みなさんからのコメント

Comment
フムフム
2021-02-03 16:03:19
娘が生後7ヶ月の孫を連れて里帰りするのですが、ハイハイをしている孫の口に、猫の毛が何かのすきに入るか心配です。
枚方のふうちゃん
2020-12-15 17:31:25
甥っ子が、1才ぐらいの時に、猫用トイレのつぶつぶを既にトイレとして猫が使っている所から、口に入れました。もう、半年ぐらい経つのですが、なんの症状も出ていません。何か検査をした方がよいでしょうか。
アニコム獣医師・松田
2020-03-02 12:58:13
>秋山様
コメントありがとうございます。
上記の記事にもある通り、ネコちゃんの唾液には猫には無症状でも、人で病気を引き起こす可能性のある細菌がいます。風邪等の呼吸器症状を起こすものや、下痢等の消化器症状を起こすものが主に挙げられます。
今回は一週間経って症状が無いとのことですので、過度に気にする必要はないかと存じますが、今後それら症状が認められた際には、早めの病院での受診をお勧め致します。
秋山
2020-02-29 13:04:56
質問させて下さい。
産まれて1カッ月たたない赤ちゃんの口を猫が目を離した隙に舐めていました。一週間経って特に気になる症状はないのですが、何に気をつけたらいいのでしょうか?

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