検査について知ろう(3) <病理検査>

 

症状を言葉で伝えてくれないどうぶつの体調を把握する上で、動物病院で行われる様々な検査は重要な役割を果たします。
人の場合と同様で、検査にもいろいろな種類がありますが、それぞれの検査で分かることを知っておくことは、わが子の身体の状態を知る上でたいへん役に立ちます。

 

 

病理検査とは

 

 

どうぶつの体の基本を成すのは細胞であり、一定の機能や形態を持つ細胞が集まって特有の機能を果たすものが組織です。また、組織が組み合わさって特有の機能を果たすものが、脳・心臓・胃・肝臓などの器官(臓器)です。これらの細胞・組織・器官(臓器)における病変を、肉眼あるいは顕微鏡等を用いて観察する検査が病理検査です。

血液検査や画像診断(レントゲン・超音波・CT・MRIなど)だけでは診断できない病気も多く、そのような病気の診断や原因の究明のためには、とても大切な検査です。
特に腫瘍においては、病理組織検査の結果が確定診断となり、その後の治療方針を立てたり、予後を推測したりするのに重要です。

病理検査は、どうぶつの体から得られるすべての細胞・組織・臓器を対象にします。
肉眼的な検査では、組織や臓器の病変の部位、大きさ、広がりなどを観察します。
また、細胞や薄く切った組織(組織切片)を用いて特殊な色素で染色を行い、病理標本を作製し顕微鏡下で観察します。その結果、病変の種類(炎症・良性腫瘍・悪性腫瘍など)、性質(悪性度・転移の可能性の有無など)、広がり方などが分かります。
必要に応じ、免疫染色などの特殊な方法を用いて、病変に存在する腫瘍細胞の種類を判定することもあります。

病理検査には、細胞診、生検組織の病理検査、手術で摘出された臓器・組織の病理検査、剖検(病理解剖)の4つがあります。

 

 

病理検査の種類

 

 

1. 細胞診(細胞診断)
スライドグラスに付着させた細胞を染色し、顕微鏡で診断する検査です。
皮膚や体の表面から触知できるところに、しこりなどができた場合、それが腫瘍であるか、あるいは腫瘍ではないのか、腫瘍であれば、悪性なのか良性なのかを知るために、患部に細い針を刺し、細胞を吸引して(針吸引)、細胞診を行います。
針吸引は痛みも少なく、注射を打つのと同じ程度の痛みであるといわれていますので、通常はどうぶつに大きな負担をかけずに無麻酔でも行うことができ、その後の治療方針を立てるのに役立ちます。ただし、しこりを構成するすべての細胞を採取しているわけではないので、確定診断には通常切除した組織の病理検査が必要となります。
また、細胞診は、針吸引による細胞診以外にも、尿、腹水・胸水などの貯留液、炎症部からの滲出液(しんしゅつえき)などに含まれる細胞、皮膚の病変部などをスライドグラスに軽く押し付けて得た細胞などからも行うことができます。

2. 生検組織の病理検査
病変部の組織の一部を採取して調べる検査を生検(バイオプシー)といいます。
専用の太い針を病変部に刺して組織を採取する方法(針生検)、専用の器具を用いて主に皮膚などから円盤状に組織を採取する方法(パンチ生検)、試験開腹などの手術により病変部の組織の一部を外科的に切除して行う方法などがあります。
組織の採取方法によって局所麻酔、あるいは全身麻酔の処置が必要です。採取された組織は薄くスライスして染色を行い、顕微鏡で観察します。
組織構造を残したままの状態で病変部を検査するため、個々の細胞について検査する細胞診よりも確定診断の参考となる情報は多くなります。

3. 手術で摘出された臓器・組織の病理検査 
手術で摘出された臓器や組織は、まず肉眼的に病変の発生部位や大きさ、広がりなどを調べます。
その後、必要な部位の組織を標本にして顕微鏡で観察し、病変の最終的な診断を行います。これらの検査から、悪性度、病気の進行状態、転移や再発の可能性の有無、化学療法や放射線療法を行ったときの効果や予後の推測など、手術後の治療方針を立てる上で重要な情報を得ることができます。

4. 剖検(病理解剖) 
亡くなってしまったどうぶつの死因や病態の解明、治療効果の判定などのために行う検査です。肉眼的に臓器の状態を詳細に観察し、必要な部位について組織を採取し病理組織検査を行います。剖検を行う目的は死因の究明だけではなく、今後の治療に役立つ情報を得ることで獣医学の進歩につなげていくことにもあります。

 

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