検査について知ろう(6) <眼科検査>

 

結膜炎、白内障、緑内障など、私たち人間を悩ませる眼科疾患は、どうぶつにもみられます。今、どうぶつの目に何がおきているのかを診断するためには、様々な検査が行われます。

 

一般検査

 

眼の病気には、眼球自体に問題がある場合だけではなく、全身的な病気の一症状として、眼球や視覚に異常が見られる場合もありますので、身体検査を行い、眼球以外の全身にみられる症状の有無を調べることも大切です。
全身状態、姿勢や歩き方、皮膚や被毛の状態などを評価したり、体重・体温・呼吸数・心拍数の測定、聴診や触診などの身体検査を行ったりします。
このほかにも、状態に応じて次のような検査も行います。
・糖尿病、高脂血症、副腎皮質機能亢進症、リンパ腫などの眼症状を伴う疾患が疑われる場合は「血液検査」
・感染症に伴う眼症状の可能性が疑われる場合は「感染症の検査」
・網膜出血や網膜剥離などのような、高血圧に伴う眼症状を見分けるためには「血圧測定」
・腫瘍性疾患や循環器疾患などに伴う眼症状の疑いがある場合には、頭部や全身の「X線検査」や「超音波検査」

 

視診

 

まず、次のような点に着目して顔面の様子を大まかに観察します。
・眼球の位置に問題がないか 
・眼球の突出や陥没がないか 
・顔面の筋肉の対称性や萎縮、弛緩がないか 
・眼球周囲の皮膚に炎症がないか、など

さらに、眼自体を細かく観察します。
・眼瞼(がんけん=まぶた)が内側にめくれていたり(内反)外側にめくれていたり(外反)していないか 
・まつ毛の生え方に問題がないか
・目やにや流涙(りゅうるい)はないか
・瞬膜(※)に充血や腫脹、突出がないか
・結膜に充血や腫脹がないか 
・角膜に傷や白濁はないか
・眼の表面に光沢があるか、など
※瞬膜(しゅんまく)は第三眼瞼とも呼ばれ、眼の内側(鼻側)にあります。結膜に覆われた軟骨から成り、眼球に痛みがあるときなどに突出し眼球を保護します。

 

視覚検査

 

視覚の状態を判断するための検査です。

1.威嚇瞬き(いかくまたたき)反応
どうぶつの眼の前に急に手を差し出してみて眼をつぶるかどうかを調べます。空気の動きの影響をなくすため、通常、手を出す際は透明な板の後ろで行います。
眼をつぶれば視覚があると判定されますが、視覚があっても、眼瞼を閉じる神経などに異常があって眼をつぶることができない場合や、幼若齢あるいは老齢のどうぶつ、興奮状態のどうぶつでは反応しない場合もあるため、眼をつぶらないからといって視覚がないとは判定できません。

2.綿球落下試験
どうぶつの眼の前で、綿球などの落ちても音のしない物を落下させ、それを眼で追うかどうかを調べます。

3.迷路試験
どうぶつを障害物などが設置された初めての場所に連れて行き、どうぶつの動きを観察する検査です。
視覚障害がある場合には、障害物にぶつかったり、不安から動きが鈍くなったりすることがあります。
部屋の明るさを変えて行うことで、夜盲や昼盲(※)を判定することもできます。
※暗いところで見えにくいのが夜盲、明るいところで見えにくいのが昼盲です。

 

反射検査

 

刺激に対して、意思とは無関係に起こる神経学的な反射について判断する検査です。

1.対光反射、眩目(げんもく)反射
眼の中に入る光の量は瞳孔(どうこう)という部分で調節されており、暗い所では光をたくさん取りこむために瞳孔が開き、明るい所では、まぶしくならないように瞳孔が縮小します。これを対光反射といいます。また、強い光を眼に当てた時に、眼をつぶる反応を眩目反射といいます。
対光反射や眩目反射が正常に起こるかどうかを調べることで、眼の異常を知ることができます。

2.眼瞼(がんけん)反射
眼瞼に触れると眼をつぶる反応を眼瞼反射といいます。眼瞼の知覚を司る神経や眼を動かす神経の機能を調べるために行います。

3.角膜(かくまく)反射
角膜に触れると眼をつぶる反応を角膜反射といいます。角膜の知覚を司る神経や眼を動かす神経の機能を調べるために行います。
角膜の知覚が低下すると瞬きの回数や涙の分泌が減って、涙量の減少により角膜や結膜に障害を起こす乾性角結膜炎の原因となります。

 

検眼鏡検査

 

検眼鏡は眼球の内部を観察するための道具です。眼球の表面(結膜、角膜)から内部(前房、虹彩、水晶体、硝子体)、眼底(網膜、視神経乳頭)まで、くまなく観察することで、異常がどこの部位で起こっているのかを確認します。

 

シルマー涙液試験

 

涙の分泌量を測定する方法がシルマー涙液試験です。眼球表面の光沢がなく、乾性角結膜炎など、涙の分泌減少が疑われる場合に行います。
目盛りのついている試験紙を眼瞼と角膜の間に1分間挿入し、涙で濡れた部分を計測します。
5mm以下は重度涙液減少、6〜10mmは軽度涙液減少、11〜14mmは涙液減少の疑いと判定します。

 

フルオレセイン染色検査

 

眼球表面(角膜表面)の傷の有無等を調べる場合には、フルオレセイン染色検査を行います。
点眼投与で局所麻酔をしてから、蛍光色素をしみ込ませたフルオレセイン試験紙を静かに眼球にあて、色素を眼球全体に行きわたらせます。
角膜表面に傷があると、その部分が染色されます。また、流涙症の原因の一つである鼻涙管(びるいかん)の閉塞も、この検査で調べることができます。
鼻涙管が通じていれば染色液が目から鼻に抜けるため鼻汁が染色されますが、閉塞していると染色されません。

 

眼圧検査

 

眼の中の圧力のことを眼圧といいます。眼圧は房水(ぼうすい)と呼ばれる透明な液体によって調節されており、
何らかの原因によって房水が増えると高くなり、減ると低くなります。眼圧測定は、眼圧が上昇して起こる緑内障などが疑われるときに行います。

 

超音波検査

 

眼の内部を観察するために行います。
角膜や水晶体が混濁している場合、検眼鏡などの他の検査で眼の内部を観察することができない場合、眼の中に腫瘤が認められる場合、眼球の大きさや厚さなどを評価したい場合などに行います。

 

隅角(ぐうかく)検査

 

眼球の中は房水と呼ばれる透明な液体で満たされ、眼圧を一定に保つことで形状を保っています。
房水は毛様体で作られ、角膜と虹彩の接合部に位置する隅角と呼ばれる部分から排出されて、一定の量を保っています。
しかし、何らかの原因で隅角からの房水の排出に異常が起こると、眼球内に過剰な房水が貯留して眼圧が上昇し、緑内障の原因となります。
隅角検査は特殊なレンズを用いて隅角の状態を観察する検査で、緑内障の発症要因を探るために行われます。

 

網膜(もうまく)電図検査

 

光の刺激に対する網膜の反応を調べるための検査です。視覚障害の原因がどこにあるのかを探る場合や、網膜疾患の診断の際に行われます。
通常、鎮静あるいは全身麻酔下で行います。特殊な装置を必要とするため、行うことのできる施設は眼科専門病院などに限られています。

 

細菌培養同定検査

 

細菌性の結膜炎の場合、目やにを採取して原因となっている菌を調べる検査です。
同時に薬剤感受性検査を行い、原因となっている細菌にどの抗生物質が効くのかを調べて目薬を選択します。

 

※コメント欄は、同じ病気で闘病中など、飼い主様同士のコミュニケーションにご活用ください!記事へのご意見・ご感想もお待ちしております。
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