ヘルニアって何だろう?

 

ヘルニアと一言でいっても、椎間板ヘルニアや会陰(えいん)ヘルニア、鼠径(そけい)ヘルニアなど、種類はさまざまです。
症状や発生部位も異なるのに、共通してついているヘルニアとは、いったい何のことなのでしょうか。今月はヘルニアについてのご案内です。

 

 

ヘルニアって何?

 

 

ヘルニアとは、臓器や脂肪などが何らかの原因により本来あるべき位置から他の場所に飛び出る状態をいいます。飛び出した臓器や脂肪を容易に元の状態に押し戻すことができるものを環納性(かんのうせい)ヘルニアといい、脱出した腸などがねじれたり、臓器が飛び出したりした状態でヘルニアの脱出部位(ヘルニア輪)が締め付けられ、元の状態に戻らなくなったものを嵌頓(かんとん)ヘルニアといいます。
嵌頓ヘルニアになると血行阻害や通過障害を起こし、臓器が壊死することもあり大変危険です。ショック状態に陥ることもあり、外科手術による緊急の治療が必要になります。

 

 

ヘルニアはどうして起こるの?

 

 

各々の臓器は筋肉や膜によって正しい位置に保たれていますが、筋肉や膜に弱い部分があったり圧がかかりやすかったりして、裂けたり隙間が広がったり穴が開くことでヘルニアは起こります。先天的に穴が開いている場合もありますし、事故や酷使、老化などにより後天的に起こる場合もあります。突出している部位の名前をヘルニアの前につけて病気の名前にすることが多いようです。

 

 

診断について

 

 

視診、触診、さらに必要に応じて、X線や超音波等の検査により診断します。椎間板ヘルニアの診断には、血液検査を含めた一般的なスクリーニング検査に加えて、神経学的検査、MRI検査 などが必要になります。

 

 

おもなヘルニアと治療について

 

 

【臍(さい)ヘルニア】
臍ヘルニアは、いわゆる「でべそ」で、臍(へそ)の穴部分にできるヘルニアです。
胎児期に母親の臍の緒とつながっていた部分が先天的な異常により閉じなかったことで起こります。臍の皮下の腹壁にあいた穴より腸管や脂肪の一部が飛び出た状態で、患部はぽっこりと膨らんだようにみえます。子犬の場合、成長するに従って自然にヘルニアの脱出部位であるヘルニア輪が閉じる場合もありますが、自然治癒が望めず、脱出しているのが脂肪だけでなく腸管などの臓器の場合には、外科的に元に整復しヘルニア輪を閉じる手術を行います。

【鼠径(そけい)ヘルニア】
鼠径ヘルニアは、お腹の中の膀胱、腸管などの臓器や脂肪が鼠径部(後足の付け根)で飛び出たもので、鼠径部に異常な膨らみがみられます。先天的な原因がある場合もありますが、「継続的に腹圧が加わること」などにより後天的に起こる場合もあります。膀胱が飛び出してしまうと排尿障害が起こることもあります。脱出しているヘルニア内容物が脂肪だけで、ヘルニア輪も小さい場合には経過を見ることもありますが、吠えたり、排便時や出産の際などに腹圧がかかり腸管や膀胱などの臓器が脱出したりすると危険ですので、手術による整復が推奨されます。

【会陰(えいん)ヘルニア】
会陰ヘルニアは、肛門の両脇のどちらか一方または両側の、ゆるんだ筋肉の隙間に臓器が入りこんでしまう病気です。中高齢の男の子の犬に多くみられます。
この部分に腸の一部や膀胱が脱出すると、踏ん張っても便が出にくいというような排便障害や排尿障害を起こすことがあります。治療は、外科的手術により飛び出した臓器を元の状態に戻し、筋肉の隙間をふさぎます。
男性ホルモンが会陰ヘルニアの発生に関与していると考えられているため、多くの場合、会陰ヘルニアの手術と同時に去勢手術も行います。

【椎間板(ついかんばん)ヘルニア】
犬や猫の背骨は、首の部分から尻尾にかけて、頸椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)、腰椎(ようつい)、仙椎(せんつい)、尾椎(びつい)と連なって構成され、背骨を構成するそれぞれの骨(脊椎)に開いた穴が、脳から尾の付け根までの脊椎に空洞を形成し、この空洞には脊髄(せきずい)が通っています。
脊椎(せきつい)の椎体間に存在するのが椎間板で、骨と骨とのクッションの役割を担い、それぞれの椎体を連結して背骨の動きを滑らかにしています。(ただし、第1頸椎と第2頸椎の間では、頭を上下左右に動かしたり回したりするための関節があるため、椎間板はありません。)
円盤状の繊維軟骨である椎間板は、ゼラチンのような髄核(ずいかく)と、髄核を取り囲む繊維輪(せんいりん)から構成されています。
どうぶつが過激な運動をしたり、強い外力が加わったり、あるいは老化が原因となって椎間板の性質に変化が生じ、椎間板の内容物が突出してしまうことがあります。この突出した内容物が脊髄を圧迫することにより障害を起こし、さまざまな神経症状をひきおこす病気が椎間板ヘルニアです。
突出して圧迫される脊髄の位置によって症状は異なります。また、圧迫の程度によっても症状の重症度が変わりますが、抱き上げると「キャン」と鳴き痛がる、後肢のふらつき、麻痺や運動失調などの症状がみられることが多く、重症になると、完全な四肢の麻痺が見られたり、排尿・排便が困難になったりすることもあります。
治療には内科的治療と外科的治療があります。内科的治療は比較的軽度な場合に行うことが多く、ケージレスト(ケージなどに入れ安静にして運動制限をさせること)を行い、ステロイドなどの消炎剤の投与により治療します。外科的治療は、内科的治療で改善が見られなかった場合や初期症状の段階で麻痺が見られるような重症例で選択されます。多くの場合、術後のリハビリも重要です。また椎間板ヘルニアのタイプによっては、経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)による治療が有効な場合もあります。

【横隔膜(おうかくまく)ヘルニア】
横隔膜は胸とお腹を隔てる筋肉であり、呼吸するときにはこの膜が上下します。横隔膜ヘルニアは、この横隔膜の一部から、肝臓や腸管などの腹部臓器が胸腔内(肺、心臓などが位置する空間)に移動してしまう病気です。
先天性のものもありますが、交通事故による裂傷が原因となる場合が多く認められます。
症状は、突出した臓器の状態によっても異なりますが、ヘルニア内容物が肺や心臓を圧迫してしまうと呼吸困難に陥り、ショック状態や死に至る場合もあります。治療としては外科的に破れたり裂けたりした横隔膜を整復します。

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みなさんからのコメント

Comment
アニコム管理者
2021-08-18 09:42:07
>まめじろう様
恐れ入りますが、アニコム損保の保険商品に関するご質問は、以下あんしんサービスセンターへお問い合わせください。
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受付時間:平日 9:30~17:30 / 土日・祝日 9:30~15:30
まめじろう
2021-08-15 02:04:14
12歳のペキニーズ雄なんですが、咳が酷く病院に連れて行った所、肺ヘルニアの診断を受けました。手術でも治るけれど再発の確率が高いと言われました。コルセットを作って装着した方がいいといわれました。コルセット代は保険対象でしょうか?
アニコム獣医師
2021-05-12 10:35:19
>しろちゃん様
通常、脱腸している場合は外科的な処置によってそのヘルニア孔を閉じることになりますが、実際の手術の必要性や適用に関しては、麻酔や手術のリスク、メリットやデメリットを考えた上での総合的な判断が必要となります。21歳というご高齢ですので、治療に関しては、再度かかりつけの獣医師とよく相談されることをおすすめいたします。
しろちゃん
2021-05-03 15:26:59
小さい時に避妊手術をした時にお腹に手術した硬いしこりが残り高齢21年生きてますが
そのしこりがぶょぶょして
きてます 今はひきつけの様な発作を飲み薬で止めてます
診察の時に脱腸してると言われました 手術した所のぶょぶょが
脱腸してるか脂肪に成ってるのか高齢ですから痛い手術はと思います
食欲も排便排尿は
正常です手術した方が良いでしょうか
アニコム獣医師
2020-11-04 15:57:09
>パンママ様
鼠径ヘルニアの場合、ヘルニアの穴が小さく日常生活に支障が無ければ経過観察することもありますが、穴が大きく消化管などの臓器が入り込んだときには、炎症を起こしたり臓器が壊死や閉塞を起こすことがあります。ヘルニア部位が大きかったり、今後拡大すると考えられる場合は早期の外科手術が推奨されますので、再度かかりつけの先生にご相談お願いします。

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