概要
Overview先天性の異常や後天性の免疫異常によって、様々な部位の筋肉に力が入らなくなる病気です。続発症として誤嚥性肺炎を引き起こすことがあり、命にかかわることも多くみられます。お薬を使って症状を抑える治療を行います。
原因
筋肉が動くためにはアセチルコリンレセプターと呼ばれる部分で、神経からの命令伝達物質であるアセチルコリンを受け取る必要があります。重症筋無力症では、この命令の受け取り場所に異常が生じることで筋肉を正常に動かすことができなくなってしまいます。重症筋無力症には先天性のものと、後天性のものがあります。
?先天性重症筋無力症
生まれつきアセチルコリンレセプターに異常があるために、神経からの命令を受け取ることができない遺伝性疾患です。非常にまれな病気ですが、ジャックラッセルテリアやスムースフォックステリアでは他の犬種より多くみられます。
?後天性重症筋無力症
免疫の異常によって、アセチルコリンレセプターが破壊されて神経からの命令を受け取れなくなります。秋田犬、テリア系犬種、ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリーバーで見られることが多い病気です。
症状
?先天性重症筋無力症
四肢の虚弱(力が入らない)により震えや短い歩幅、短い距離しか歩かないなどの症状が見られます。また、食道の筋肉が緩むことで巨大食道症になると、食べた物を胃に送り込むことができずに吐き出してしまうこともあります。通常は8週間前後で症状が現れ始めます。
?後天性重症筋無力症
‐全身型
四肢の虚弱によって短い距離しか歩かない、うまく立ち上がれない、震えなどの症状が見られます。これに加えて、下記の局所型の症状を伴う場合があります。
‐局所型
四肢の虚弱は見られませんが、巨大食道症あるいは顔面の筋力低下を引き起こします。巨大食道症は吐き出しや誤嚥(食べ物をうまく呑み込めず気管に入ってしまう)を引き起こします。誤嚥は肺炎(誤嚥性肺炎)の原因となることがあります。顔面の筋力低下は表情の異常やまばたきができなくなるといった症状が見られます。
‐劇症型
急性に運動失調や呼吸困難を引き起こします。
治療
お薬を使った治療が主体になります。
?コリンエステラーゼ阻害薬
神経からの命令伝達物質であるアセチルコリンは、放出されるとコリンエステラーゼという酵素によってすぐに分解されていきますが、コリンエステラーゼの働きを抑えることでアセチルコリンが筋肉に対して長く作用できるようにします。これによって筋肉への命令の伝達を助けます。
?免疫抑制剤
後天性の場合は免疫異常が原因となっているため、上のコリンエステラーゼ阻害薬だけでは症状の改善が難しい場合、この免疫の暴走を抑える治療も行います。主にステロイドのお薬が使われるほか、シクロスポリンやアザチオプリンなどの免疫抑制剤が使用されることもあります。
これに加えて、巨大食道症を伴っている場合は、誤嚥を起こさないように立位(身体を垂直に立てた状態)で食事を与えるなどの介助が必要になることがあります。
予防
重症筋無力症そのものを予防する方法は今のところありません。
この病気で気を付けたいのは巨大食道症による誤嚥性肺炎です。重症筋無力症のワンちゃんは誤嚥性肺炎が原因で命を落とすケースが多くみられます。巨大食道症を伴う重症筋無力症になった場合は、誤嚥をさせないために、日々の食事のケアをしっかりと行うようにしましょう。
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