肛門腺とは
肛門の左右(時計に例えれば4時と8時の位置)にある一対の袋を肛門嚢(腺)といいますが、この中に悪臭がする分泌物(液体〜ペースト状)が入っています。
この分泌物が「肛門嚢液」、あるいは「肛門腺液」などと呼ばれているものです。
通常、ウンチをする時に肛門腺が圧迫されて、ウンチと共にこの分泌物が排泄されます。
ところが、生まれつきこの肛門腺が出にくい犬や、下痢などによる炎症が原因で排出する穴がふさがってしまっている犬の場合は、肛門腺液が溜まり続けてしまいますので定期的に絞ってあげることが必要です。分泌物は犬によって液状であったり、粘土状であったりと様々です。色も薄黄色から黒茶色、灰色とバラエティーに富んでいます。
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肛門腺の役割
犬や猫はこの肛門腺の臭いで自分以外の相手を識別したり、縄張りの臭い付けに利用したりしています。
肛門腺絞りの目安
肛門腺がたまってしまう犬は、個体差もありますが、月一回程度絞ってあげることが必要です。シャンプーの時などに絞ると、お尻の汚れや臭いをそのまま洗い流せるのでお勧めです。月に1回程度は絞り出してあげてください。
若いころにはたまらなかった犬でも年齢とともに分泌液の状態が変化してきて貯まりやすくことがありますので、時々貯まっていないか触って確認してあげるとよいです。
大型犬に比べると、小型犬や中型犬、または肥満犬の方が、肛門腺が溜まりやすいと言われています。肛門腺がたまってくると、犬は気になるため肛門を舐めたり、お尻を床に擦りつけたり、自分の尾を追いかけたりします。
肛門腺の絞り方
1.ビニール、ティッシュ、ウエットティッシュなどを用意します。
2.しっぽを持ち上げて肛門が見えるようにします。
3.肛門から押し出すように絞りだします。
この時に、勢い良く出てくる可能性もありますので、肛門をティッシュで覆い、絞るようにすると良いでしょう。(飛び散ると非常に臭いです。)
4.絞った後、お尻の汚れを拭きましょう。
たまった肛門腺を絞らないとどうなるの?
肛門腺がうまく出ないでどんどんたまり続けてしまうと、炎症をおこしてしまい化膿しやすくなります。また、悪化するとお尻の皮膚が破けてしまうこともあります。
このように炎症が起こっている状態を肛門腺炎、さらに悪化して皮膚が破けると肛門腺破裂と呼んでいます。
肛門腺炎・破裂の症状は?
犬は肛門に不快感を覚え、肛門を舐めたり、咬んだり肛門を床に擦りつけたりします。
自分の尾を追いかけるなどの仕草をすることもあります。また、肛門付近の皮膚が破れると出血したり、そこから膿が出てきたりする場合もあります。
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どんな風に治療をするの?
肛門腺を絞ってたまりすぎている分泌物を排出させます。また炎症がひどい場合や化膿が起こっている場合には化膿止めなどの薬(外用薬・内用薬)の投与を行います。
皮膚が破けてしまっている場合には消毒や外科的に縫合が必要なこともあります。
予防方法は?
肛門腺がたまりやすい犬は、定期的に絞ってあげましょう。
自宅での肛門腺絞りが難しい場合は?
コツをつかむと簡単な肛門腺絞りですが、それまではなかなか上手に出来ないものです。
コツといっても千差万別、犬の顔が皆違うように、肛門腺のある位置もそれぞれ異なります。また、絞りやすい子もいれば、絞りづらい子もいますし、中には肛門腺の分泌物が固くて絞ることが難しい場合もあります。肛門嚢の位置によってはかからだの外からでは絞れないこともあります。
このようなときは獣医さんやトリミングなどで絞ってもらい、肛門腺絞りのコツを教えてもらっても良いでしょう。
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肛門腺の分泌物が溜まることでお尻付近を気にして舐めたり、お尻歩きをしたりすることはありますが、後ろ足にびっこ等の跛行が見られる場合は、外傷、足先・膝・大腿部の骨・関節の異常、椎間板ヘルニア等の脊髄疾患が認められることが多いです。
早期の治療が必要になることがあるため、症状が続くようであれば受診されることをお勧めします。
肛門腺絞りの頻度は一般的には1ヵ月に1回程度ですが、体質によってはそれより短い期間で分泌物が溜まってしまうことがあり、その場合は溜まるタイミングに合わせた肛門腺絞りが必要です。
無理に絞ると炎症を起こしてしまうことがあるため、一度動物病院で絞るタイミングと絞り方を確認、指導していただけるか相談し、できそうであればおうちで実施するのも良いでしょう。
一ヶ月に一度トリミングの時に絞ってもらってますが、家でも絞ったほうが良いのでしょうか?
睡眠中に排便が見られる場合、大腸炎等による激しい下痢や、外傷、老化、神経系疾患等による肛門括約筋の弛緩等が主な原因として考えられます。
症状が続く場合は受診されることをおすすめします。