どうぶつのターミナルケア( 4 ) 自宅で行うケア <寝床の工夫と褥 瘡(じょくそう=床ずれ)の予防 <犬>

 

我が家にやってきてくれた、愛しいこの子と過ごせる時間は輝いていて、出会えたことを神様に感謝したくなりますね。しかし犬や猫たちにとっては時の流れが人の5倍ほどのスピードで過ぎていくため、寿命は人より短い、ということがずっしりと胸に響く日がやってきてしまいます。
命の終着駅に向かって最後の力を振り絞り歩く我が子をしっかりと支え、虹の橋へ送り出す日を避けることはできませんが、悔いなく真心を尽くしたいですね。

ターミナル期にはどうぶつたちも私たち人間と同じように、横たわって休んだり眠ったりする時間が多くなります。当然、寝床で過ごす時間が長くなりますので、寝床の環境を快適に整えてあげることは、リラックスして穏やかに過ごすためにたいへん重要です。体に苦痛を感じていることも多いのですが、快適な環境を作ることで、少しでも辛さを緩和してあげられたら嬉しいですね。

 

 

寝床の場所

 

 

どこを寝床にするかは、ターミナル期のさまざまな介護をしやすくするためにも、重要なポイントです。 飼い主さんが介護をしやすく、かつどうぶつが安心して過ごせる場所に寝床を設置するため、次のようなことをご参考にしていただくとよろしいでしょう。

◇トイレをさせやすく、また、トイレのお世話もしやすい場所
◇食事をさせやすく、また、食事のお世話もしやすい場所
◇空調から出る風が直接当たらない場所
◇1日を通して室温がほぼ安定していて快適な場所
(夏は風通しが良く、強い日差しがあたらない、冬にすきま風が入らない、など)
◇騒音や振動がなく落ち着いて過ごせる場所
◇飼い主さんから目が届きやすく、家の中での動線を考えたとき、お世話をしやすい場所
◇前からどうぶつがお気に入りだった場所

自分で歩いて移動できるどうぶつであれば、部屋の数か所にくつろげる場所を用意して、どうぶつ自身がそのときの室温や身体の状態に合わせて快適な場所を選んで休めるようにしてあげると良いですね。

また、これまで外飼いだったどうぶつも、できれば室内で管理していただくことが望ましいでしょう。 屋外の暑さや寒さ、強風などの天候の変化はどうぶつの身体に負担をかけます。
衛生状態を保つためにも、飼い主さんの目が届きやすく、お世話もしやすい室内で介護してあげた方が良いでしょう。
 

 

 

寝床について

 

 

寝床の素材が硬すぎると腰や関節に負担がかかり、痛みの原因となったり褥瘡ができやすくなったり します。逆に軟らかすぎると、体が沈み込みすぎて熱や湿気がこもったり、自分で立ち上がったり移動 するのが難しくなることもあります。また、高齢犬、特に寝たきりの犬の場合、寝床の素材が 適切でないため、痛みなどで眠れなかったりすることが夜鳴きの原因である場合もあります。快適に過ごせる素材の寝床を選んであげることはたいへん重要です。
適度な硬さと通気性があって、体圧を分散させる効果のあるマットを早いうちから利用すると、褥瘡の予防に効果的です。また、どうぶつによって好きな姿勢や心地良い姿勢があったり、特定の姿勢で痛みが出るような場合もあります。快適な姿勢が保てるように、クッションなどを利用して工夫していただくのも良いでしょう。

寝たきりになると、食事の介助や排泄も寝床の上で行うようになるかもしれませんので、乾きやすく、 清潔を保ちやすい素材のものを併せて使用してはいかがでしょうか。人間のお子さん用のおねしょシーツや乾きやすいタイプのバスタオルなどをマットの上に敷いておくと、マットはそのままで、敷物ごとどうぶつを移動させることができ、ケアをするときや体位を変えるときに便利です。
また、寝床の清潔を保つことは皮膚病や感染症を防ぐためにも必要です。汚れたら処分できるよう 使い古しのタオルやペットシーツなどを利用すると、汚れるたびにこまめに交換もできますし、洗濯をする手間を省くこともできます。

どうぶつの体調に対する心配と不安、そしてさまざまな日常のケアで、飼い主さんご自身の疲労がたまってしまいます。 ご自身の体を休めることは後回しになってしまいがちですが、ご自身をいたわることも忘れないようにしていただければと思います。

 

 

褥瘡の予防

 

 

褥瘡は、寝たきりなどで長時間にわたって同じ姿勢で寝ているときに、体が寝床に接触している部分で血管が圧迫されて血行が悪くなり、組織が壊死してしまう状態をいいます。圧迫以外にも、栄養不良による皮膚状態の悪化、皮膚の不衛生や蒸れ、移動時の摩擦などが誘因となる場合もあります。 褥瘡ができやすいのは、頬、肩、腰、かかとなどの、骨が出っ張っていて体重がかかって圧迫されやすい部分です。初めは圧迫されている部分の毛が薄くなって皮膚が赤くなり、徐々に腫れてプヨプヨしてきて、その後皮膚が破れて穴があき、滲出液が出てきます。ひどくなると穴が骨にまで達し、感染を起こして化膿し、痛みが強くなります。重症化すると治すのがたいへんですので、日頃から皮膚をよく観察し、早めに徴候を見つけて対処するようにしましょう。

褥瘡を防ぐには、同じ部分が長時間圧迫され続けないようにするために、定期的に寝がえりをさせて姿勢を変えてあげることが必要です。体圧を分散させる効果のあるマットを使うことも効果的です。また、褥瘡のできやすい骨の出っ張った部分にドーナツ型クッションの穴の部分をあてる方法もありますが、この場合、クッションと接触している部分に圧力がかかりますので注意が必要です。寝返りや移動のときの皮膚の摩擦も褥瘡の原因になりますので注意しましょう。
十分な栄養をとること、皮膚を清潔に保ち蒸れを防ぐこと、マッサージなどで血行を促すことなども予防につながります。

褥瘡ができて皮膚が破れてしまった場合には、清潔を保ち感染を防ぐために、周囲の毛を刈って洗浄し、傷口の処置を行います。感染のリスクや徴候がある場合には、抗生物質の投与などもあわせて行う必要があります。悪化させないためにも適切な処置が必要ですので、主治医の先生に診ていただきながらケアするようにしましょう。

 

 

寝返りのさせ方

 

 

寝返りをさせる時には、一度伏せの姿勢をとらせるような感じで、背中が上になるようにしてから向きを変えるようにしましょう。背中を下にして回転させると内臓に負担がかかってしまいます。特に食後は 胃捻転を起こす危険が高くなりますので避けましょう。
褥瘡を予防するためには、理想的には2?3時間おきに寝返りをさせてあげると良いでしょう。ただし、どうぶつによって好きな向きや姿勢があって、反対側にすると嫌がることもあります。関節や筋肉が硬くなっているためにそのようなことが見られることが多いですので、なるべく早いうちから関節の曲げ伸ばしなどのマッサージを行い、体が硬くならないようにしておくと良いでしょう。また、嫌がる向きでも、クッションなどを利用して少し姿勢を変えてあげることで落ち着くこともありますので試してみましょう。

 

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( 1 ) ターミナルケアとは

( 2 ) ターミナルケアで行われる医療行為

( 3 ) <食事のサポート>

( 4 ) <寝床の工夫と褥 瘡(じょくそう=床ずれ)の予防

( 5 ) <心地良い生活環境を作る>

( 6 ) <排泄の介助>

( 7 ) <身体の清潔を保つ>

( 8 ) <適度な刺激を与える>

( 9 ) <痛みでつらそうだったら>

(10) <褥創(じょくそう)ができてしまったら>

ターミナル期の過ごし方 〜今、ここを大切に〜

 

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