どうぶつのターミナルケア( 5 ) 自宅で行うケア <心地良い生活環境を作る> <犬>

 

我が家にやってきてくれた愛しいこの子と過ごせる時間はきらきらと輝いていて、出会えたことを神様に感謝したくなりますね。ところが、犬や猫たちは時の流れを人の5倍ほどの速さで経験していて、寿命は人より短い、ということがずっしりと胸に響く日がやってきてしまいます。
いちばん考えたくないことですが、命の終着駅に至る道を、最後の力を振り絞り歩く我が子をしっかりと支え、虹の橋へ送り出す日を避けることはできません。
この子の残りの日々を少しでも心穏やかで苦痛の少ない生活にしてあげたいと、生活環境を見直すとき、どのようなことに気をつけてあげたら良いのでしょうか。ポイントを確認してみましょう。

 

温度管理

 

 

ターミナル期になると、体力が低下するととともに体温調節も上手くできなくなってきますので、温度管理には十分な配慮が必要です。自分で動くことができるどうぶつには、いつも過ごす生活スペースの中にリラックスして休むことのできる場所を何ヶ所か用意しておき、快適な温度の場所を自分で選ぶことができるように配慮してあげると良いでしょう。一方で、思うように動くことができなくなってしまい快適な温度の場所へ自分で移動することができなくなったどうぶつには、特に注意をしてあげる必要があります。
どうぶつが寝ている所と飼い主さんがいつも過ごしている所では、体感温度が異なることもあります。時々寝ているどうぶつに寄り添ってみて、ちょうど良いかを確認してみましょう。
また、これまで屋外で生活してきたどうぶつも、できれば温度管理ができる室内で生活させてあげるのが望ましいでしょう。

 

 

夏の管理

 

 

犬は人間とは異なり汗腺が少ないので、汗をかくことにより熱の放出をすることが苦手ですから、より注意をしてあげる必要があります。また、温度だけではなく、湿度にも十分に目を光らせる必要があります。人間と同じで、犬も夏場は室内でも熱中症の危険があります。飼い主さんの外出時などには特に注意をしてあげましょう。
犬には、人が快適に感じるよりも若干低めで、パンティング(口をあけてハアハアすること)をしない程度の温度に設定してエアコンをかけるようにしましょう。
気温は、床に近い所では低くなることにご留意いただき、実際に飼い主さんもしゃがんでいただいて、どうぶつがいつも過ごす床に近い場所が冷え過ぎてはいないかをチェックしましょう。また、カーテンやスダレなどを利用して部屋に直射日光が差し込まないようにしてあげることも大切でしょう。状況に応じて、ペットボトルに水を入れて凍らせたものなどを利用しても良いですね。
また、いつでも新鮮な水を飲めるようにしてあげることもたいへん重要です。器の水を切らさないように適宜補給してあげてください。
猫は犬よりも比較的暑さに強いとはいわれていますが、猫の熱中症にも注意が必要です。部屋の一部分でも良いので、必ず涼しく心地良い場所を用意しておいてあげましょう。部屋の空気が冷えすぎないことも大切です。猫にとって少々冷え過ぎているようなときも、猫が自分で体を温めることのできるように、お気に入りのクッションや毛布などを用意しておいてあげると安心です。
自分で動くことの出来なくなってしまった猫であれば、いつも猫が過ごす場所で寄り添ってみていただき、猫がいる辺りの環境が適温かを確認してあげましょう。
なお、扇風機の使用は室内の空気の循環には有効ですが、汗腺の少ない犬や猫の場合、人と異なり体温を下げる効果は少ないといわれています。

 

 

■冬の管理

 

 

冬場の寒さは体力の落ちたターミナル期のどうぶつには、とてもこたえます。夜間でもできる だけ20度以下にならないようにしてあげましょう。ケージごとタオルやダンボールで覆って保温することも有効です。ペットヒーターや湯たんぽなどを利用する場合には、低温やけどに十分注意をしましょう。
また、お腹を冷やさないことは免疫力の維持にも大事ですので、体の下に敷くものを用意したり、腹巻をするなどの工夫をしてあげると良いでしょう。

 

 

☆どうぶつが、特に寒さに弱くなったように感じたら・・・

 

 

ターミナル期にはどうしても体温調節の機能が落ちてきますが、「このところ、うちの子、ずいぶん寒さに弱くなったな」とご家族が感じるようになったり、体温の低い状態が続くというような場合には、甲状腺機能低下症を発症している可能性もあります。
甲状腺機能低下症は特に高齢の犬で多くみられる疾病であり、「体温の低下」以外にも、「動きたがらず寝てばかりいる」、「毛艶が悪くなる」、「脱毛する」などの症状が見られます。寒さに弱くなったようにみえることが甲状腺機能低下症によるものであれば、甲状腺ホルモンの投薬などの治療によって症状を緩和させたり改善させたりしてあげることができます。
気になる症状については主治医の先生に相談してみましょう。

 

 

☆室内と室外の気温差にも注意

 

 

外出時など、室内から室外に出るときのように、急激に温度差の大きな場所を移動することは、体に大きな負担をかけます。特に血管の収縮や血圧など循環器系に大きな影響を与えますので、心臓の悪いどうぶつでは注意が必要です。玄関などの比較的、外の気温に近い場所で少し身体を慣らしてから外に出るなど、工夫してあげましょう。
 

 

 

湿度管理

 

 

湿度もターミナル期のどうぶつの体調に大きな影響を与えます。冬場の乾燥に配慮が必要なのは、呼吸器や循環器が弱ってきているどうぶつです。また、夏の蒸し暑さは、心疾患があり肺水腫を起こしやすいどうぶつの状態を悪化させる原因になりやすいといわれています。
「気管支や呼吸器系の弱いどうぶつでは湿度は心持ち高め」、「心疾患があり肺水腫を起こしやすいどうぶつでは湿度は多少低め」に設定をしてあげると、身体への負担が軽くなることがあります。加湿器や除湿器を上手に利用して調節してあげましょう。
一般的には、犬や猫が快適に過ごせる湿度は40~60%くらいとされていますが、どうぶつの状態によって最適な湿度は変わってきますので、目安となる湿度を主治医の先生に確認していただくと良いでしょう。

安全な室内環境

体力が落ちたり、足腰が弱くなってくると、家の中の思わぬ所で事故がおきることがあります。ターミナル期のどうぶつに優しい室内環境になっているかどうか、確かめてみましょう。

■床

フローリングなどの滑りやすい床は、足腰の弱ったどうぶつには立ち上がりづらかったり、踏ん張りがきかずに関節を痛める原因になったりすることがあります。生活スペースには滑り難い素材のマットを敷くなど、工夫をしてあげましょう。じゅうたんやラグなどを使用する場合は爪がひっかからない素材のものを選び、まめに洗濯したり、日光消毒を行って、ダニの温床にならないように気をつけましょう。

■段差

高齢の犬やターミナル期の犬では、今まで何の問題もなく昇り降りをしていた玄関の段差やソファーなどであっても、昇り降りに失敗して腰や関節を痛める原因になってしまったり、怪我をしてしまったりすることが良くあります。猫の場合も、お気に入りの高い所に昇ろうとして失敗したり、飛び降りたときに着地の衝撃で関節を痛めたりということがみられます。若いときや元気なときと体の状態が違うことを、どうぶつはなかなか自分で理解してくれません。お部屋の中に犬や猫が昇り降りして危険な個所がないかどうかを確認してみましょう。
「昇ったときに危ない状況が予想されるものは撤去する」、「高い所に飛び上がる足場になるものを置かない」などにご留意いただき、危ない所には昇らせないように工夫しましょう。
玄関の段差やソファーの昇り降りの際は抱っこをするなど、なるべく昇り降りをさせないようにしていただくのがベストですが、どうしても自分で昇り降りしてしまう場所にはスロープなどを設置して、足腰に負担がかからないように配慮してあげましょう。

■隙間

視力が弱っていたり、高齢で認知力が低下してきたどうぶつが、家具と家具の間の隙間に入り込んでしまうことがあります。特に認知力の低下したどうぶつは、前に進めても後ろにさがることが出来なくなってしまうことが多く、隙間に入り込んだまま出られなくなってしまうことがあります。部屋の中にどうぶつが迷い込みそうな隙間がないかどうか良く確認し、危険だと思われる所には当たっても痛くない障害物を置いたり、お風呂用のマットのような柔らかい素材のもので塞ぐなど工夫していただき、入り込まないよう気をつけてあげましょう。

 

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( 2 ) ターミナルケアで行われる医療行為

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( 4 ) <寝床の工夫と褥 瘡(じょくそう=床ずれ)の予防

( 5 ) <心地良い生活環境を作る>

( 6 ) <排泄の介助>

( 7 ) <身体の清潔を保つ>

( 8 ) <適度な刺激を与える>

( 9 ) <痛みでつらそうだったら>

(10) <褥創(じょくそう)ができてしまったら>

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