どうぶつのターミナルケア( 7 ) 自宅で行うケア <身体の清潔を保つ>  <犬>

 

シニア期やターミナル期の犬や猫たちは、元気なときと比べると抵抗力や免疫力が落ちてきて、感染や炎症を起こしやすくなります。そのため、皮膚炎や外耳炎、歯肉炎などを起こしたり、皮膚にできた腫瘍や褥創(じょくそう=床ずれ)が悪化して感染を起こしてしまうこともあります。

このような状態は、どうぶつ本人に不快感や苦痛をもたらすだけでなく、ニオイなどの原因と なって介護するご家族の精神的な負担になってしまうこともあります。
犬や猫を感染や炎症から守ってあげるためにも、快適に日々を過ごすためにも、どうぶつの身体を清潔に保つように努めましょう。
一方で、ターミナル期を迎えたどうぶつのお世話は、ご家族にとって精神的にも肉体的にも大変なことが多いため、飼い主様ご自身の身体を十分にいたわっていただきたいと思います。無理のない範囲で気持ちに余裕を持ちながら、愛おしいわが子の毎日のお世話をすることができると良いですね。

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( 1 ) ターミナルケアとは

( 2 ) ターミナルケアで行われる医療行為

( 3 ) <食事のサポート>

( 4 ) <寝床の工夫と褥 瘡(じょくそう=床ずれ)の予防

( 5 ) <心地良い生活環境を作る>

( 6 ) <排泄の介助>

( 7 ) <身体の清潔を保つ>

( 8 ) <適度な刺激を与える>

( 9 ) <痛みでつらそうだったら>

(10) <褥創(じょくそう)ができてしまったら>

ターミナル期の過ごし方 〜今、ここを大切に〜

 

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目の周りのケア

 

 

涙や目ヤニをそのままにしておくと、目の周囲のただれや炎症を起こしやすくなります。ぬるま湯にひたしたガーゼなどで優しく拭いてあげましょう。薬局などで販売されている目の清拭(せいしき)用のコットン(人間用)を利用しても良いでしょう。長毛種で目の中に毛が入りやすいようであれば、そっとお手入れの邪魔になる毛をカットしておくのも良いですね。
目薬をさしたり目の周りを拭く際、容器やコットンが、どうぶつの視界に入らないように気を 付けながら近づけるようにしましょう。また容器の先が、どうぶつの目に触れないようにしましょう。
ケアをしながら優しく話をしたり、触られて気持ち良さそうにする部分をそっと撫でたりすると、ケアをしてもらう時間が、飼い主様の愛情を感じることのできる素敵なひと時だと伝わるかも しれません。ケアの後には、「きれになったね」、「お利口だったね」などと褒めてあげましょう。
ケアをしていると、目ヤニの色や量の変化、涙の量の変化、「目をしょぼつかせる」、「目を地面にこすりつける」、「前足で顔を引っかこうとする」などの行動の変化に気付くことがあります。このようなときは主治医の先生の診察を受けるようにしましょう。

 

 

口の周りや歯のケア

 

 

毛や皮膚に水や食べ物が付着したままの状態にしておくと、皮膚炎を起こしやすくなってしまいます。口の周りは水を飲んだりお食事をすることによって特に汚れやすくなりますので、その都度きれいに拭くようにしましょう。毛が長い犬たちは、フードなどが口の周りに付きやすくなるので、お手入れをしやすい長さにカットしてあげると良いかもしれません。汚れを拭き取るのが難しい場合は、洗瓶(せんびん=ノズルのついた噴出式のボトル)を利用したり、ぬるま湯をはった洗面器に口元をつけて、そっと洗ってあげると良いでしょう。洗った後は、乾いたタオルで水気を拭きとって乾燥させるようにしましょう。
よだれが多かったり口臭が強い場合には、口内炎や歯肉炎が原因となっている可能性もありますので、主治医の先生に診てもらいましょう。
また、高齢になると唾液の分泌が少なくなり、口の中に食渣(しょくさ=食べ物のカス)が残りやすくなります。お食事の内容が柔らかいフードや流動食の場合には、より残りやすくなり、さらに歯肉炎を起こしやすくなります。食後に湿らせたガーゼで、お口の中に残っている食渣を拭き取ってあげると良いでしょう。またガーゼや歯ブラシで歯のケアを行ったり、歯茎をマッサージしてあげることも大切です。歯茎が赤くただれていたり、歯がぐらついたりしているようでしたら、かかりつけの獣医師さんに相談しましょう。

 

 

耳のケア

 

 

耳の中の汚れがニオイの原因となっていることがありますが、通常は湿らせたガーゼなどで外から見える部分の汚れを優しく拭きとる程度のお手入れで十分です。
「ニオイが強い」、「耳の中が赤い」、「黄色や黒色の耳垢がたくさん出ている」、「耳を気にして痒がる」、「頭をしきりに振る」などの症状がある場合には、外耳炎を起している可能性がありますので、主治医の先生に診てもらいましょう。
耳垢が多い場合には耳専用の洗浄液で耳道洗浄を行います。また、細菌や真菌の感染がある場合には、洗浄後に抗生剤や抗真菌剤の点耳薬を使用する必要があります。

 

 

お尻周りのケア

 

 

排泄後のお尻周りが汚れやすい犬の場合は、お尻周りやシッポの毛を、お手入れがしやすい長さにカットしたり、シッポを粘着包帯などで巻いておくと良いでしょう。また、長毛種の猫の場合も、可能であればお尻周りの毛をカットしておくとよろしいでしょう。
肛門周りの汚れなどは、ペットや人の赤ちゃん用のお尻拭きなどを利用すると便利ですが、汚れを取るためにゴシゴシこすってしまい、皮膚を傷つけて赤くなったり、痒がるようになることがありますので気を付けましょう。取りづらい汚れの場合は、小さいどうぶつであれば抱き上げて洗面器にはったぬるま湯の中で洗ってあげると良いでしょう。抱き上げるのが難しい場合や大きいどうぶつの場合には、お尻の下にペットシーツなどを敷いて、洗瓶などに入れたぬるま湯で流しながら優しく汚れを取り除いてあげると良いでしょう。泡状のシャンプーなどを利用しても良いでしょう。

 

 

全身のケア

 

 

優しく身体を毛並みにそって撫ぜてもらうことは、痛みなどの辛さと闘う犬や猫への心のケアにもなりますし、いつもと違うことはないかというチェックにもなります。優しい飼い主さんの声と掌ほど、どうぶつたちの心をしっかりと支えるものはないと思います。このように、こまめに全身の皮膚や被毛もチェックして、気になる点は主治医の先生に相談しましょう。必要に応じてシャンプーなどでさっぱりとさせてあげたいのですが、シャワーを利用するなど、全身を濡らしてのシャンプーは、ターミナル期のどうぶつには負担になってしまう場合もあります。特に心臓の悪いどうぶつは、お風呂場の湿気が体調の悪化につながる こともあります。また、足腰の弱ったどうぶつは濡れた床で滑って思わぬ怪我につながってしまうこともあります。「今の状態で全身のシャンプーをしても大丈夫かどうか」、「シャンプーをする際にはどのような点に注意する必要があるのか」などを、主治医の先生に事前にご相談しておくと安心です。家でのシャンプーが難しい場合でも、トリミングサービスを併設する動物病院さんなどにお願いできる場合もありますので、ご相談いただくと良いでしょう。
全身のシャンプーが難しかったり部分的な汚れを落としたいときには、「洗瓶に入れたぬるま湯で洗い流す」、「蒸しタオルで拭く」、「粉状や泡状のシャンプーを利用する」などの方法があります。
なお、「皮膚に赤みがある」、「フケやかさぶたができている」、「皮膚のニオイが強い」などの場合は、皮膚炎を起こしている可能性もあります。ターミナル期のどうぶつの皮膚炎は、悪化してしまうと治りづらくケアが大変になりますので、気になる様子があれば早めに主治医の先生に診てもらいましょう。

 

 

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