細菌は、外耳炎、皮膚炎、気管支炎、肺炎、腸炎、膀胱炎、外傷など、どうぶつたちを悩ませる多くの病気やケガに関与しています。細菌にも、黄色ブドウ球菌、溶血連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌など、さまざまな種類があり、細菌への感染症を治療する際に欠かせないのが、細菌の増殖や機能を阻害する抗生物質です。
感染症の治療で重要なことは、たくさんの抗生物質の中から最も高い効果を発揮する薬を選択することです。
そして、原因となっている細菌の感受性を把握し、治療したい部位に最も適した抗生物質を選択する上で重要な指標となるのが、「細菌薬剤感受性検査」です。
「感染症を引き起こしている細菌には、どの抗生物質が効くか」を調べる「細菌薬剤感受性検査」は、具体的には、次のような手順で行います。
1.感染部位から採取した細菌を培養することにより、病気を起こす原因となっている菌(起炎菌)の種類を特定する。
2.特定された細菌を、各抗生物質を含ませた培地(※)で培養したり、抗生物質をしみこませた濾紙を置いた培地で培養したりする。
※微生物や細胞などを培養するために必要な栄養等の環境を調整した物質を培地といいます。
抗生物質が効いていれば(=感受性がある)細菌の発育が阻止されますが、効いていない(=感受性がない)場合には細菌が生えてきます。この結果をみて抗生物質が効いているかどうかを判断します。
「細菌薬剤感受性検査」によって、感染の原因となっている細菌にどの抗生物質が効くのかを知ることができますが、感受性があることがわかった抗生物質であっても、すべてが治療に使用できるわけではありません。
「皮膚炎にはよく効くけれども膀胱炎には効果がない」、「腸炎にはよく効くけれども皮膚炎には効果がない」といった抗生物質ごとの特徴や、「肝臓が悪いどうぶつには使わない方がよい」、「腎臓が悪いどうぶつには使わない方がよい」などといった薬の代謝経路の違いも考慮しなくてはいけません。投与方法(1日の投与回数等)や剤型(錠剤、カプセル、シロップ、粉薬)なども加味しながら、感受性の高い抗生物質の中から、感染部位にもっとも浸透性がよく、身体に対する負担や副作用が少なく、薬を投与する飼い主さんと投与されるどうぶつ双方に、なるべくストレスのかからないタイプのものを選択します。
近年、薬剤耐性菌の出現が問題となっていますが、このようなことを極力防ぐためにも、感受性のある抗生物質を適切な期間、投薬することが必要です。抗生物質の利用に際しては、かかりつけの獣医師さんの指示を守り、きちんと投薬するようにしましょう。
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