「痒がる」、「赤い」、「フケが出た」、「毛が抜けた」、「湿疹ができた」などの「皮膚のトラブル」は、どうぶつにもとても多くみられます。
一言で「皮膚のトラブル」と言っても、細菌や真菌、外部寄生虫などの感染、アレルギー、内分泌(ホルモン)の異常、免疫介在性、腫瘍など、その原因はさまざまです。
適切な治療を行うためには、その原因をはっきりさせることがとても重要です。今回は、皮膚病の原因を探るために動物病院で行われる様々な検査についてご紹介します。
皮膚の視診
皮膚全体を見て病変の状態を調べます。
「どのような部位に病変があるか」、「脱毛の程度」、「ベタベタしているか・カサカサしているか」、「赤み」、「痒みによるひっかき傷はないか」、「湿疹の有無」、「石灰沈着はないか」、「ノミ糞はないか」、「マダニの寄生はないか」などを丁寧にみることによって、どのような原因によるものなのか、その可能性を把握します。
寄生虫を見つけるため、眼で見る以外に、ブラシをかける「くしとり検査」やセロテープを貼り付ける「セロテープ検査(テープストリップ)」があります。
押捺塗抹(おうなつとまつ)検査(=スタンプ検査)
病変部にスライドグラスを押しつけ皮膚表面の分泌物や細胞、微生物などを採取し、染色して顕微鏡でみます。
細菌やマラセチア(酵母様真菌)の感染、炎症性細胞、アレルギー性細胞、腫瘍細胞の有無などを調べます。
被毛検査
皮膚糸状菌症や、シラミ、ハジラミなどの外部寄生虫感染などが疑われるときには、被毛を直接顕微鏡でみて感染の有無を調べます。
脱毛症状がある時には、毛根部の状態をみることで毛周期の異常を知ることができます。
また、毛の先端が切れていれば、「痒みでどうぶつが毛を噛みちぎっているのではないか」ということを推測することもできます。
皮膚掻爬(そうは)検査(=スクラッチ検査)
皮膚の一部を鋭匙(えいひ)で削り取り、顕微鏡で観察します。
疥癬(かいせん)、ニキビダニ(アカラス)など、皮膚や毛穴の内部に入り込んで生活する寄生虫を検出するために行います。
一度の検査では寄生虫がみつからないことも多いため、感染が強く疑われる場合には、繰り返して検査をすることが必要な場合もあります。
ウッド灯検査
皮膚糸状菌症が疑われるときに行います。ウッド灯と呼ばれる紫外線照射装置で、ある波長の紫外線を病変部の皮膚に照射します。
皮膚糸状菌(Microsporum canis)に感染している場合、緑色の蛍光を発することがあります。光を当てるだけで簡便に行える検査ですが、感染していても蛍光を発しない場合もあるため、光らなかったからといって感染を否定することはできません。
真菌培養検査
皮膚糸状菌症が疑われるときに行います。専用の皮膚糸状菌鑑別用培地(ばいち/※)を使用し、被毛の一部を採取して培養し、真菌の生え方、培地の色の変化で診断を行います。
※微生物や細胞などを培養するために必要な栄養等の環境を調整した物質のこと
細菌培養検査・薬剤感受性検査
細菌感染による皮膚炎が疑われる時に行います。病変部から検体を採取し、培養して細菌の種類を特定します。
また、原因となっている細菌に効果のある抗生物質の種類を特定するために、細菌薬剤感受性検査もあわせて行います。
アレルギー検査
何らかのアレルゲンに対するアレルギー反応が原因で起こる皮膚炎を、アレルギー性皮膚炎といいます。
食事が原因で起こるもの(食事性)、アレルゲンとなる物質の吸引で起こるもの(アトピー性)、アレルゲンと接触することで起こるもの(接触性)などがあります。
皮膚炎の原因としてアレルギーが疑われる時に、原因となっている物質(アレルゲン)を特定するために行われるのがアレルギー検査です。アレルギー検査には次のようなものがあります。
1.皮内反応試験
どうぶつの皮膚に、アレルギーの原因となっている可能性が高いと考えられる物質を、それぞれ少量ずつ注射します。
アレルギー反応の有無により、どの物質に対してアレルギーを持っているかを把握します。
2.アレルゲン特異的IgE検査
ハウスダストや花粉といった環境中のアレルゲンを特定するため、現在もっとも一般的に行われています。
IgEは体内でつくられる抗体である免疫グロブリンの一種であり、花粉症、気管支ぜんそく、アトピーなどのⅠ 型アレルギーと呼ばれるアレルギー反応に最も深く関わっています。IgEは、それぞれのアレルゲンに対して特異的に作られ、アレルギー反応を起こすという特徴がありますので、どの物質に対するIgEが増えているかを調べることで、アレルゲンとなっている物質を特定することができます。
3.リンパ球反応試験
どうぶつのアレルギー性疾患で多いものには、IgE抗体を介するⅠ型アレルギーのほかに、白血球の一種であるリンパ球を介して起こるⅣ型アレルギーというものがあります。食物アレルギーにはⅣ型アレルギーが関与しているものが多いといわれていますので、状況等から食物アレルギーが疑われる場合には、
アレルゲン特異的IgE検査と併せてリンパ球反応検査を行うことが多くなってきています。
血液から分離させたリンパ球を各種の食物タンパクと反応させ、このときのリンパ球の数を測定することで、アレルゲンとなっている食物の特定を行います。
4.除去食試験
食物アレルギーが疑われる場合、症状が本当に食物アレルギーによるものかを確かめ、また原因となっている食物を特定するために行います。
今まで食べていたフードやオヤツなどを一切やめてもらい、アレルギーの原因である可能性のある食材を一切含まない食事(除去食)のみを一定期間(通常1ヶ月半〜2ヶ月程度)与えます。
除去食のみを与えたことで症状の改善がみられた場合、それまでに食べていた何らかの食物に対するアレルギーであった可能性が高くなります。
アレルゲンとなっている食物を特定するためには、除去食を与えながら、原因となっている可能性のある食物(例えば、鶏肉や牛肉など)を1週間、1種類ずつ与えてみます。その結果アレルギー症状が起これば、その食物がアレルゲンであると特定できます。
ホルモン検査
内分泌(ホルモン)の異常によって皮膚の変化がみられる病気には、副腎皮質ホルモン分泌過剰(副腎皮質機能亢進症)、甲状腺ホルモン分泌減少(甲状腺機能低下症)、性ホルモン分泌過剰と減少、成長ホルモン分泌減少などがあります。
このような内分泌性皮膚疾患が疑われる場合は、血液を採取し、血液中のホルモン濃度を測定するホルモン検査を行います。
病理検査
天疱瘡(てんぽうそう)のような自己免疫疾患や腫瘍性疾患が疑われる場合などに、病理検査を行います。
患部に細い針を刺して細胞を吸引(針吸引)したり、病変部にスライドグラスを押しつけたりして、細胞や滲出液を採取し、その中に含まれる細胞を調べる「細胞診」や、皮膚の一部を円形に採取して組織を調べる「パンチ生検」などが行われます。
まとめ
普段外から見て病気の存在に気づきやすい皮膚病ですが、このようにさまざまな原因が考えられ、なおかつ原因を明らかにするために必要な検査も異なります。また内分泌疾患に代表されるように、時には体の中の異常が原因で皮膚に病変が認められる場合もあります。その際には上記の検査に加えて、一般的な血液検査やエコー検査も実施することもあります。
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※個別のご相談をいただいても、ご回答にはお時間を頂戴する場合がございます。どうぶつに異常がみられる際は、時間が経つにつれて状態が悪化してしまうこともございますので、お早目にかかりつけの動物病院にご相談ください。
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ネコちゃんの顎が赤く腫れており、湿疹も認められるということであれば、皮膚の疾患(猫ニキビと呼ばれるもの等)やできもの、外傷等の可能性などが考えられます。一度動物病院で診て貰うと良いかと思います。
ワンちゃんは環境が変わったりその日の温度や湿度で、皮膚の状態が変わることがあります。預けたあとにカサカサになったり、乾燥していることに気がついた場合ですが、皮膚に炎症や腫れが無い場合は症状が落ち着くこともありますし、続くようでしたら皮膚疾患の可能性もありますので、一度かかりつけの先生にご相談ください。
毎日、ブラッシングして気づかなかったのですが昨日1泊ホテルに入っててもらい、今日迎えに行って晩に気づきました。痒がらず痛がらず、腫れもなく脱毛もないです。カサカサしているだけです。
何かまた、様子を見ててよいものか教えてもらえませんか。