「新型インフルエンザ」ってどんな疾病?
新型インフルエンザとは、どうぶつのインフルエンザウイルスがウイルスの遺伝子組み換えなどによりヒトの体内で増殖可能な状態に変化し、人から人に伝染する能力を新たに有するようになったウイルスです。新たに伝染する能力を有したわけですから、一般にヒト側では免疫の獲得の見込みが低く、このため感染が拡大しやすく、多くの感染者を出すことが懸念されています。今話題となっている新型インフルエンザは、メキシコや米国等で確認された豚インフルエンザ(H1N1)を感染症法第6条第7号に規定する新型インフルエンザ等感染症に位置づけたものです。
インフルエンザウイルスってどんなウイルス?
インフルエンザウイルスは構造上の特性から大きく分けて、A・B・Cの3型に分けられます。生物を分類する際には「科」「属」「種」によって表しますが、インフルエンザウイルスはオルソミクソ科(A・B・C型)インフルエンザウイルスという表し方をします。このうち流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。特にA型は毎年変異を繰り返しながら季節性インフルエンザとして毎年流行します。またウイルス粒子表面には2種類の糖蛋白があり、その型の組合せで「H*N*」と表現されます。
今流行している豚由来の新型インフルエンザはA型ですので、糖蛋白の型から「インフルエンザAH1N1」と表わされます。
そもそも「感染症」って何?
「感染症」とは、細菌やウイルスのような微生物が体内に侵入し増殖したためにおこる病気のことをいいます。「感染症」のうち、個体の感染症が同種の他の個体に次々と広がっていく(伝染する)病気を特に「伝染病」とよぶ場合があります。
病原微生物の種類による分類してみると・・・
・ウイルス感染症
【ヒト】インフルエンザ、麻疹(はしか)、ヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)、など
【イヌ】犬ジステンパーウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、など
【ネコ】猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)など
【フェレット】ジステンバー、インフルエンザ、アリューシャン病など
【うさぎ】兎ウイルス性出血病など
【トリ】 PDD =腺胃拡張症、ヘルペスウイルス感染症など
・細菌感染症
【ヒト】結核、赤痢、コレラ、梅毒、など
【イヌ】犬レプトスピラ感染症、犬ブルセラ症、など
【ネコ】ボルデテラ症、など
【フェレット】細菌性外耳道炎 など
【うさぎ】パスツレラ症など
【鳥】鳥結核症など
※他にも、真菌(カビ)感染症、・寄生虫感染症などがあります。
・ウイルスと細菌はどう違うの?
ウイルス | 細菌 | |
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大きさ | 数十〜数百nm 電子顕微鏡でないと確認できません。 ※1mm=1,000μm=1,000,000nm |
数〜数十μm 普通の顕微鏡で確認できる程度です。 |
増殖様式 | 自力では増殖できず、他の生物の細胞の中でしか増殖できません。 | 環境中に栄養源・エネルギー源があれば、環境中において自力で代謝・増殖できます。 |
生体への影響 | ウイルスは、感染した細胞の通常の機能を変化させたり細胞を破壊することで、どうぶつに影響をあたえます。 | 細菌は毒素を産生することで、感染したどうぶつに影響を与えます。 |
治療 | ウイルス感染症に対して汎用的に使用できる薬はありません。 ごく一部のウイルスには抗ウイルス剤が開発され治療薬として有効です。(インフルエンザの「タミフル」など)。 |
一般的に「抗生物質」といわれる「抗菌剤」により細菌を破壊したり増殖を抑制することが可能です。 |
予防 | 物理的な感染防止策:マスクの着用、うがい・手洗いなどワクチン接種:インフルエンザ(従来の季節型)、日本脳炎、麻疹 (はしか)、おたふくかぜ、などのさまざまなウイルスに対するワクチンが広く使われていますが、ヒト免疫不全ウイルス感染症(HIV)や新型インフルエンザなどに有効なワクチンはまだ開発されていません。 | 物理的な感染防止策:マスクの着用、うがい・手洗いなどワクチン接種:細菌に関しては、結核や破傷風、百日咳、ジフテリアなどはワクチンがあります。 |
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